多様化するメディアだが、今メインのコミュニケーション経路に絞るとざっくり「スクリーンのあっち側/こっち側」に2分割できる。テレビ、スマホ、PCなど分厚い前者に対して、後者を担うのは基本的にOOH(=Out of Home/屋外広告)。あっち側の世界で見聞きしたものを、こっち側=実世界で改めて接触することで臨場感が高まる。
旧くて新しいメディア「OOH」の存在感が高まっているのは、デジタルサイネージなどの技術的な進化のおかげも一定あるが、それよりもスマホやサブスクによるデジタル世界への没入が増えた反動でリアル=OOHのメディア接触体験が際立つからだろう。いわば、デジタルのすべての認知を「リアライズ➡︎確信」に変換する機能といえる。
ONスクリーンでのコミュニケーション技術が進化するに従い、OOHを軸とするOFFスクリーン活用の重要性も高まる。まずはOOH本来の特徴や位置づけについて改めて考えてみよう。
OOHについて改めて考える
OOHとは現実世界にプロダクトプレースメントする手段である
プロダクトプレースメントという手法は見込み客が好きな映画や漫画、アニメなどの作品世界や憧れの雑誌の「編集コンテンツ内(広告ではなく)」でブランドを使ってもらうことでプレゼンスを上げると同時にブランドエッジを立てていく方法。没入感の高いゲーム内のプレースメントも効果的。
たとえばゲランのメテオリットというフェイスパウダーは「魔法のパウダー」というコピーが代名詞のようになっている。アニメ「魔法少女まどかマギカ」のお化粧道具シーンには、特徴的なカラフルなパールボールが入っている。またドラマ「24」では悪役のパソコンがマイクロソフトのウィンドウズで、味方はマックを使っている。ブランド側から仕掛けたものか、制作者の表現意図かはわからないが、このような視点で物語を観てみるのも面白いだろう。
OOHを打つことは、現実世界にプロダクトプレースメントするということ。受け手はスクリーン上で興味を持ったものが、現実世界に確かにあることを確認・確信できる。本来OOHは最も原初的な広告手段なので(お店の看板とか)、受け手の臨場感を掻き立てるために欠かせない方法。
場所の文脈に乗せてメッセージを強化
OOH(屋外広告)の魅力のひとつに、場所の文脈を使ってメッセージを強化できることがある。同じ東京でも渋谷、新宿、恵比寿と街の文脈は全く違うし、掲出場所によってもその動線を使うクラスタの属性は大きく変わる。まさに「メディアはメッセージである」の通り掲出場所によって表現を後押しできる。
下北沢に住んでいた時、京王井の頭線のホームから空を見上げると「下北沢に住むなら、せまい部屋でいい。夢があればやっていけそうな街だから。(at home)」というビルボードが掲げられていた。これも駅ごとの文脈に合わせて、メッセージをマルチ展開させることでその街を歩く人・住む人・住みたい人のハートを掴むアプローチといえる。
メディアミックス効果と場所への紐づけで記憶を強化
メディアミックスとは、複数種のメディアを組み合わせてリーチさせることで広告効果を最大化する手法。メディア同士の接触体験が相互に強化し合うことで、単一のメディア接触と比べて同じリーチ回数でも記憶に差が出るといわれている。OOHはこのメディアミックス効果を狙う上で最もベーシックで頼りになる方法である。
また、人間の記憶は場所に紐づけると強固になる。 記憶術の達人の中にはいつもの部屋や道に記憶したいものを置くイメージをして憶える人もいるというが、その意味でもOOH(屋外広告)は有効。とはいえ膨大な情報に埋もれるので、その場所の文脈に合った置き方(表現)をするなどの表現上の工夫は必要となる。
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