異常気象が日常化した、いまの時代の処方箋。気象予測データを活用した「お天気マーケティング」

マーケティングの進化は、アドテクによってのみもたらされるのではない。最近目立つのが高度化した気象予測データを活用した「空気を読み、先手を打つ」お天気マーケティング。日本という小さな国でも、地域によって気象や気候は全然ちがう。それぞれの地域ごとに最適なタイミングで広告・商品を投下することで、マーケティングコストのロスをなくし、売上の最大化を図ることができる。

これまではマーケティングがはずれた時の常套句(言い訳)として天気のせいにできたが、異常気象がすっかり日常化してしまった現代においては、予め気象予測を織り込んだ上でのマーケ設計が必要になるだろう。まずそもそも①どんな気象状況を想定した設計だったのか ②それと実際の天候との差分と実績への影響度は? というようなことまで問われるようになる。情報技術が高度化すればするほど、ヒトが考えるべきこともどんどん増えていく。

気象予測に基づいた「お天気マーケティング」の事例

事例①:放送エリアごとの花粉飛散データを元にキャンペーンを実施

同じメッセージでも、受け取るタイミングによって受け止め方は大きく変わる。花粉なら「ムズムズ」してきたタイミングで広告接触すると購買行動に直結し、タイミングがズレるとロスが発生する。気象データをもとに放送エリアごとの飛散予測に基づいたTVCMキャンペーン展開なども現在では可能になっており、CM枠買い付けタイミング=数カ月前に予測して買い付けている。

これまでは過去データに基づいた全国一律の広告キャンペーンしかできなかったものが、その年のエリアごとの予測データを活用して週ごとに広告+商品のボリューム調整が可能に。科学的なデータに基づいた展開は広告効果の最大化はもちろん、棚交渉にも有利に働くため売上増進効果も大きい。

事例②:桜前線ならぬ「鍋前線」をメーカーが発表

季節消費型の商品は、メーカー側がキュー出しをすると需要を呼び起こせる。2024年の長い残暑を受けてミツカンは「最低気温15℃以下が3日続いた日=鍋開き宣言」として発表。さらに予報をもとに「鍋前線2024」も発信。鍋つゆ市場は19年比108%と増進中で、タイパとつながり重視の若年層に積極的にアピールを続ける。

春の風物詩である「桜の開花宣言」と「桜前線」の文脈を冬場のプロモーションに活用することで、意味伝達をスムーズにすると同時に「待ち遠しい・・」ワクワク感も喚起。遊びゴコロ溢れる「ネタ」を鍋仲間とのコミュニケーションに投下することで、鍋需要の盛り上がりを狙っている。また豊富なレシピを紐づけることで鍋パの回数増にもつながる。

出典:ミツカン公式サイト

事例③:鍋つゆの用途外活用を提案

エバラ食品は暖冬が予想され、鍋需要の低下が見込まれるこの冬に向けて個食鍋ブランド「プチっと鍋」シリーズの汎用性をアピールするため瀬戸康史が肉野菜炒めを料理するCMを制作。メインの30-50代に加え若年層向けに縦型動画も展開する。

1人暮らし世帯の増加に合わせて生まれたエバラ「プチっと鍋」は、その汎用性・利便性の高さから個食鍋市場で売れ行きナンバー1となっている。コンパクトに持ち運べて常温保存できるため、様々なアレンジレシピ発信や、キャンプ飯などのシーン提案によってさらなる利用シーンの拡大を図っている。

さらに「1人用」という固定観念払拭のため、発売当初からの「1プチっと1人前」というコピーに加え「3プチッと3人前」も追加し、ファミリー需要も狙う。人数に合わせて自由に使えるという理解を得ることで、ユーザーの利用イメージを膨らませることに成功している。

また、同じエバラの「なべしゃぶ」は桜田ひよりを起用し「イヤフォン片方消失事件」等をTikTok縦型動画で描き、未解決のまま「ダメだ、鍋だ!」と展開。“鍋料理で人生がほんの少しイージーモードになる”を訴求。現代の「ちょっとヤなことあるある」のフラストレーションを商品ベネフィットに接続することで、行動喚起を狙っている。

参考:厳しい残暑の「鍋」戦略 鍋料理以外の活用方法を訴求、エバラ食品工業

現代のちょっとヤなことあるあるのフラストレーションを商品ベネフィットに接続すると行動喚起につながる。エバラなべしゃぶは桜田ひよりを起用し「イヤフォン片方消失事件」等をTikTok縦型動画で描き、未解決のまま「ダメだ、鍋だ!」と展開。“鍋料理で人生がほんの少しイージーモードになる”を訴求。
参考:ダメな日は鍋だ!エバラ、桜田ひより出演の縦型動画公開

参考:「売れどき」を外さない!シーズンインとピークをビッグデータで予測せよ

参考:「タイパ」ニーズに応えた「鍋つゆ」戦略 友だち同士で楽しむ新しい価値提案、ミツカン

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