「モノ」ど真ん中の捉えなおしでブランド鮮度を更新。「物性シズル」を掻き立てるアプローチ

国民食やロングセラーのお菓子など、日常にすっかり溶け込んでしまったおなじみ商材の魅力を改めて喚起するには「物性シズル」を別のアングルから捉えなおさせることも有効。商品の物性ど真ん中を新鮮な角度で見せることで妙に気持ちが掻き立てられ「ひさびさに食べてみたくなる」ようになる。

商品特性のど真ん中である物性シズルを掻き立てることは、そのまま差別化につながる。そもそも商品は、他では得難い画期的な体験を提供するために企図して生まれたもの。新発売時の感動はやがて薄れていくが、アングルを変えて訴求し続けることで鮮度を更新しながらブランドのライフサイクルを延ばせる。

コト消費文脈のコミュニケーションにおいては「思わずやってみたくなる」要素が必須だが、物性シズルを掻き立てるアプローチはそのまま「噛んでみたい」「嗅いでみたい」という気持ちに直感的につなぎ込めるので強い。改めてモノに立ち返りながら、大胆な捉えなおしによってコト消費のツボを押さえる。

物性シズルを掻き立て、ブランド鮮度を上げるアプローチ例

事例①:蒟蒻畑の「むちもちもちむち」訴求

物性シズルのある商品は、捻らずにストレートの球速をMAXにする勝ち筋も。マンナンライフの蒟蒻畑は見上愛を起用し「むちもちもちむち蒟蒻畑」というフレーズとともにハイスピードカメラでリアルなむちもち具合を映像化。改めてユニークな食感の捉えなおしを促すことでひさびさに食べたくなる感を喚起している。

前代未聞の「こんにゃくゼリー」として91年の新発売時は新鮮だったが、今やすっかり日常化した蒟蒻畑は近年事故などのニュースも続き停滞感も漂うブランド。売り出し当初、営業先では机に投げつけても砕け散らない特異さを訴求していたが、今回改めて唯一無二の物性を軸にコミュニケーションを展開する。

事例②:アロエヨーグルトの「アロエ」のリフレッシュ

ロングセラーブランドも改めて今の文脈にコンセプトを仕立て直すことで若返りを図れる。発売30周年の森永乳業アロエヨーグルトは新ブランドコンセプト「いいアロエは、いい畑から」を掲げ、単なる具材ではなく、大切に育てられた農産物として捉えなおしてもらうことで安心安全を訴求する。

そもそも食材として「アロエ」を使う食品は現代においても珍しいが、生活者にとってアロエヨーグルトは「30年前に認知が完了」した商品。だから改めて商品性の軸である「アロエ」自体の食材としての捉えなおしを促すことで物性シズルを掻き立て、商品自体のブランドリフレッシュを図る。

事例③:丸亀うどーなつ

既に一旦認知されている商品の物性をブーストするためには、他カテゴリとブレンドすることも有効。丸亀製麺はいま再びのドーナツブームに着目し「丸亀うどーなつ」を企画。別カテゴリのドーナツのもちもち食体験を通して、改めてうどんのもちもち食感の物性シズル掻き立てを図っている。

うどんから生まれたドーナツ「丸亀うどーなつ」は、丸亀シェイクうどん、丸亀うどん弁当などを上回る丸亀製麺過去最大のヒット商品。24年6月発売後1ヶ月で予想の倍の400万食を売上。うどんのモチモチ食感をドーナツに転用することが鍵なので、とにかく何度もモチモチ食感を追求して試作を重ねた。

渋谷道玄坂にできた横丁・祭り風の内装のポップアップストア「丸亀うどーなつ屋」は全24種のトッピングのアレンジなども可能にした体験型空間。自分のアレンジセンスをアピールしたい若年層のUGC創出にもつなげている。スイーツ市場はもちろん、小腹を満たす間食ニーズにも新たな活路を模索している。

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