生活者のニーズの隙間をこじ開ける。「シーン限定訴求」の積み重ね効果

「朝専用」など利用シーンを限定することで商品のエッジが立ち、存在感が立ち上がる。茫洋たるマーケットの中で普段は埋もれていても、特定の時間帯と紐づけておくことで定期的に想起されるブランドになれる。今の生活者は賢いのでシーンを限定したからといって用途は狭まらず、特性はクリアに伝わる。

一つのブランドの利用拡大を進めるには、利用を推奨したいシーンに限定したサブブランドを投入して一日の中での利用時間帯を推し広げていくのが有効。同じ人間でもシーンによってモードは変わるので、さまざまなアングルから商品ベネフィットを提案することで、常備品に昇格する機会を最大化できる。

ニーズの隙間をこじ開ける「シーン限定訴求」実例

事例①:青春のハイライトシーンの「あと」に光を当てる

人生の味わい方を捉えなおさせることで商品の味わいも変えられる。大塚食品マッチは部活、告白、体育祭といった青春の代名詞のようなイベントではなく、そのあとに訪れる「名前のない時間」を「青春のボーナスタイム」と名付け「#◯◯のあと」で展開。「青春のあともうまいのだ。」のキャッチで締める

感情を掻き立てる利用シーンを描写することでマインドセットが立ち上がる。マッチは「家に着くまでが、青春。」キャンペーンを開始。輝く青春のあとにある、名前のない青春の時間を若年層に人気の青春bot氏がイラスト化。部活後などのゆったりタイムにゴクゴク飲める微炭酸のマッチが合うことを訴求。

人生はハイライトな瞬間以外の方が圧倒的に長く、多くの体験記憶もそこに眠っている。余白時間にこそ、自分自身の感情や想いを書き込める。マッチは青春の中の「名前のない時間」に光をあてることで膨大な個人記憶を呼び覚まし、そこに商品を紐づける。まさに「青春の1ページに残すブランド戦略」だ。

事例②:スポーツ専用のガム

利用シーンを限定することで特定の時間帯の利用頻度が上がる。これを広げていくと総体として需要の底上げになる。ロッテが出したスポーツガム「キシリトール スポーツガム」はガムベース多めで噛みごたえを強化し、スポーツ時の利用を狙う。chocoZAPでのサンプリングやサイネージでも訴求。

ロッテのスポーツガムは、近年増加するジム利用者のトレーニング中の時間にガムを取り入れてもらうアプローチ。単調なトレーニング中でも、口にガムがあれば気分がリズミカルに弾む。「味をしめた」ジム利用者はトレーニング後も他のガムを噛んでくれる。昨今のラジオ人気もジム時間との親和性が理由。

事例③:締切に追われる人専用のテレワーク個室

〇〇専門店や、すこし前だとWONDAの「朝専用・モーニングショット」とか、ニッチを豪快に攻める一点突破戦略は強力。テレワーク・テクノロジーズ社の「締切に追い込まれた方専用」のテレワーク個室というのも発想が面白い。一見ニッチだが、「締切」は誰にとっても切実な問題でもある。

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