編集部が思わず取り上げたくなるアイテム。メディアインサイト埋め込み型のプロダクト開発とは

プロダクト開発の際、ユーザーインサイトはもちろんメディアインサイトも埋め込んでおくと編集コンテンツで取り上げてもらえるので広告費を大幅に節約できる。ただ、いわゆる広報・PR的な情報発信では、メディア側がかなり警戒心を持っており、広告➡消費者と変わらないようなハードルがあることも事実だ。

この要因は、広報・PR業界の情報発信のスタンスにある。視聴したいコンテンツを遮るという枠の特性上「広告は邪魔者である」というのは、広告の制作者にとっては基本認識。だが、広報・PR業界にはその認識は薄い。よって、自社本位の情報が多すぎる広報のプレスリリースもメディア側にとって邪魔者なのだ。「タダで宣伝してくれ感」に辟易している編集者の心(するわけない!)は、シャットアウト寸前。

「メディアが取り上げたくなる」プロダクト開発には、生活者インサイトを理解しそれをコンセプチュアルに言語化できることはもちろん、編集部インサイトにも精通している必要がある。編集コンテンツとして取り上げざるをえない「情報価値=NEWS」を纏わせたプロダクトは、圧倒的な初速を生む。

メディアインサイト埋め込み型のプロダクト例

太いトレンドに乗せる:サウナ文脈の「サバス」

広告無しで売れるプロダクトを作るにはトレンドの太い線を押さえつつ、メディアが取り上げざるを得ないわかりやすいギミックを組み込む必要がある。たとえば現在の「サウナブーム」はかなり太いトレンド文脈。ここに「市バスの中でサウナに入る」というそそるギミックを入れると移動型サウナバス「サバス」になる。

さらに領域特化メディアと組めば確実性が上がる。たとえばリバースが運営する移動型サウナバス「サバス」。サウナ検索サイト「サウナイキタイ」と開発から連携している。

太いトレンドに乗せる:UX文脈の「友達がやってるカフェ/バー」

他にはUX文脈で「新種の接客体験価値」を味わえるお店として、元電通の明円卓さんが率いるkakeruが手がける「友達がやってるカフェ/バー」もメディアで話題だ。来店すると「来てくれたんだ!」と迎えられ「いつも飲んでるやつ」などのメニュー名を選ぶことで常連感を楽しめる。店員は普段、役者やモデルなどをしているため奇抜な設定ゆえの「怪訝な瞬間」もない。これは既存の全ての接客体験がレバレッジとなり、新鮮な感動を生むアプローチといえる。

専門店としてエッジをたてる:試食BARアサクサ

トレンドを「業態」として提示しつつ、メディア受け含めたエッジを立てやすいのが「専門店」。タピオカや高級パン、パンケーキ等記憶に新しいが、一品に絞り込むことで「こだわり」の期待値を上げる。そもそも一回のランチでは一品しか食べられないのだから、一品に絞ったほうが純粋想起されやすくなる。

専門店ブームもここまできたかと思うのが浅草の「試食専門店」試食BARアサクサだ。新しい味覚に出会えて、ランチ代も浮く。知られざる美味しい食べ物に出会うきっかけは他人の味覚に触れるパーティーなど意外と限られているので、意識的に発掘しに行ける場は消費者・生産者ともに魅力的だ。

SDGs文脈に乗せる:竹材の有効活用「テオリ」

普通に考えたら筋が悪くて誰もやらない、だからこそブルーオーシャンを満喫できる。という勝ち筋はある。テオリは値段がつかないから手入れもされない竹林の竹を集成材にして、竹ならではの「しなり」を味わえる家具を製造。30-50年かかる杉に対して3-5年で出荷できる竹材の活用は成長余地も大きそう。

ご褒美消費文脈に乗せる:よなよなエールの「隠れ節目祝いセット」

ちょっと頑張った自分を祝福するご褒美消費は割と定着したが、それに気がつける距離感の誰かに祝福されると喜びも増幅する。よなよなエールの「隠れ節目祝いセット」は卒乳などの個人的な節目にお祝いが贈れる。そもそも酒はコミュニケーションツールだが、モノを起点に豊かな会話が生まれる仕組みだ。

メディアインサイトを埋め込む方法

既存のメディア文脈の中から、どの点をつけば「取り上げざるを得ない」状態になるか。それを逆算するためには普段から大量の見出しをスキャンし、編集部の気持ちに精通する必要がある。現在はU-NEXTなどのサブスクで何十冊もの雑誌が読み放題なので、これを活用しないテはない。紙の雑誌を買って読むと思わず「読み込んで」しまうが、読み放題の状態でスマホでペラペラめくると10分程度で一冊分を確認できる。

ついでにマンガも「最初の3話だけ」などの読み放題分だけを読むといい。現在紡がれている様々な物語の「基本設定」をグロスで把握しておくことで、ブランドストーリーを紡ぐ際の世界観のヒントになる。

また、メディアアタックにもコツがある。闇雲にリリースをばらまくのではなく、相手の状況を踏まえたアプローチが必要だ。まず、編集部はとにかく忙しい。編集部には日々取り上げてほしいとメールが届くが、ほぼ無視せざるを得ない。だからどのような文脈で記事化できるのか、まで書かないと取り上げてもらえない。無数にくる問い合わせにわざわざ理解して想像力を働かせて切り口を練る、のは編集部は無理で、送り手の責任なのだ。

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