自分だけの「発想のひきだし」のつくり方。積み上げ型モーニングルーティンのススメ

一般的な発想法やフレームワークと別に、自分オリジナルの考具をストックすることで「あの人らしいアイデア」が生まれる基盤ができる。個性や独自性というものは気合いやパフォーマンス、旅先の自分探しでは辿り着けない。自分ならではの思考をコツコツと積み重ねていく先に自然と立ち現れてくるものだ。

私の場合、一番の考具は「捉えなおし」というアプローチだ。ヒクソンのチョークスリーパーの如く、いつなん時でもどんな状況からでも極められるように、日々鍛錬を重ねている。平日毎朝のモーニングルーティンとして行っているのが「マーケの捉えなおし」だ。最新のマーケニュースから気づきある事例を1つピックアップし、手法論として140文字にまとめておく。毎月24件ほど、2年半で700超の気づきが蓄積されていく。

これはマーケトレンドのキャッチアップと同時に、端的な整理・言語化のトレーニングにもなる。書いたものは2週間毎朝読み返しながら、さらに毎月一度、noteに見出しをつけながらまとめていくことで手続き記憶として脳に定着させる。その中で共通する傾向があれば、それを一括りにして「名前をつけて保存」することで自分ならではの発想のひきだしを1つ増やせる。

マーケティング戦略についての発想の引き出し

クリエイティブの表現についての考具や最近熱いOOH系の考具も作っているが、今回は「マーケティング戦略」を考える上で使えそうな考具をピックアップして紹介したい。

過去例①:認知のフタをこじ開けろ。「パーツの切り出し」で以下同文モードを解除する捉えなおしメソッド

人間はある物事について一旦認知を完了すると「以下同文モード」が働き新規メッセージの受付を停止する。その後の広告の認知効率は急に落ちるため、捉えなおしによって再び認知のフタをこじ開ける必要がある。その際に有効なアプローチのひとつが「パーツの切り出し」。その一点を起点に再解釈が起こる。

プロダクトのパーツ単体の存在感が引き立つことで結果的にプロダクト全体の特徴がクリアになり、また期待値最適化によりその味わい方や楽しみ方の知覚品質も上がる。という切り口で●具なしの中華まん「すまん」(井村屋)●たれ”だけ”たっぷり たまご醤油たれ(ミツカン)●ペヤングの「ソース」だけを切り出して売るなどの事例を交えながら紹介した。

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過去例②:生活者のニーズの隙間をこじ開ける。「シーン限定訴求」の積み重ね効果

「朝専用」など利用シーンを限定することで商品のエッジが立ち、存在感が立ち上がる。茫洋たるマーケットの中で普段は埋もれていても、特定の時間帯と紐づけておくことで定期的に想起されるブランドになれる。今の生活者は賢いのでシーンを限定したからといって用途は狭まらず、特性はクリアに伝わる。

一つのブランドの利用拡大を進めるには、利用を推奨したいシーンに限定したサブブランドを投入して一日の中での利用時間帯を推し広げていくのが有効。同じ人間でもシーンによってモードは変わるので、さまざまなアングルから商品ベネフィットを提案することで、常備品に昇格する機会を最大化できる。という切り口で●青春のハイライトシーンの「あと」に光を当てるマッチ(大塚食品)●スポーツ専用ガム(ロッテ)●テレワーク・テクノロジーズ社の「締切に追い込まれた方専用」のテレワーク個室などの事例を紹介。

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過去例③:「モノ」ど真ん中の捉えなおしでブランド鮮度を更新。「物性シズル」を掻き立てるアプローチ

国民食やロングセラーのお菓子など、日常にすっかり溶け込んでしまったおなじみ商材の魅力を改めて喚起するには「物性シズル」を別のアングルから捉えなおさせることも有効。商品の物性ど真ん中を新鮮な角度で見せることで妙に気持ちが掻き立てられ「ひさびさに食べてみたくなる」ようになる。

商品特性のど真ん中である物性シズルを掻き立てることは、そのまま差別化につながる。そもそも商品は、他では得難い画期的な体験を提供するために企図して生まれたもの。新発売時の感動はやがて薄れていくが、アングルを変えて訴求し続けることで鮮度を更新しながらブランドのライフサイクルを延ばせる。

コト消費文脈のコミュニケーションにおいては「思わずやってみたくなる」要素が必須だが、物性シズルを掻き立てるアプローチはそのまま「噛んでみたい」「嗅いでみたい」という気持ちに直感的につなぎ込めるので強い。改めてモノに立ち返りながら、大胆な捉えなおしによってコト消費のツボを押さえるという切り口で●蒟蒻畑の「むちもちもちむち」訴求●アロエヨーグルトの「アロエ」のリフレッシュ●丸亀うどーなつの事例を紹介。

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過去例④:LTV時代のマーケティングの勝ち筋。ポッキーとガッキーに学ぶ「青春の1ページに残す」ブランド戦略

人口が減少していく社会でドメスティックな市場を相手に戦う場合、必然的にLTVの重要性が増す。つまり、1人の顧客から生涯どれくらい買い続けてもらうか?そこで重要になるのがブランドコミュニケーションのタイミング。多感な時期に聴いた曲は生涯を通して心の曲になるように、「青春の1ページに残すブランド戦略」は愛され続ける第一歩となる。

多感な時期にブランド接触することで、その時の「切実な」感情と共に青春の1ページの記憶に鮮烈に残せる。と同時に、大人になってからはその想い出を起点に「時間のレバレッジ」が働くのでプレミアムな価値も生まれる。何より、他のブランドが後から何をしようと、もはやその座を奪うことはできない。という切り口で●カロリーメイト「光も、影も、栄養にして。」●ポッキー「ポッキーって、楽器じゃん」●コロナ明け前後のポカリスエット広告などの事例を紹介。

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過去例⑤:魅せる保存食「サヴァ缶」や「ワークマン女子」に学ぶ。売り場のモンタージュでブランドのイメチェンを

体験消費の時代、売り場のモンタージュは熱い。モンタージュとは視点の異なる複数の映像を組み合わせることで受け手の解釈の中に新しい意味を生む映像の表現手法。これは売り場の棚戦略でも応用できる。たとえば、パン屋でバスケットを売ればそのまま爆買いしてピクニックに出かける人もたまに出るだろうし、アップルストアで高級リンゴ売るのもわかりやすい。

しかし、そういうストレートな発想よりも、オシャレ雑貨店で米や餅を売るとかKALDIで工具売るなど「裏切り」を入れた方がモノの文脈が拡がる。そのブランドの文脈とは違う「意外な」文脈の棚に置くことで新たな意味が発生し、パッケージやネーミングを変えなくてもブランドリフレッシュを図ることができるのだ。

売り場のモンタージュが、プロダクトの認識をパッと変えるのに有効な理由。それは、人の脳は固有名詞(ポチ)より一般名詞(イヌ)の方が覚えやすいという特性を持つから。つまりカテゴリ認知を揺さぶると、パーセプションの更新を促しやすいのだ。ヤクザの中にJK(薬師丸ひろ子)が君臨するから「セーラー服と機関銃」はヒットしたのだ。という切り口で●アパレル棚でサバ缶を売る「Ça va?缶=洋風サヴァ缶」(東の食の会)●牛乳石鹸の赤箱を中川政七商店で売る(というか、展示する)●作業服屋で女性アパレルを売る「ワークマン女子」の事例を紹介。

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