タイトルは私が大学時代に丸暗記した2冊のコピーの本「あの広告/広告コピーはすごかった!」(中経出版・安田輝男著)からとっているが、早くにアタマにぶち込んだおかげで、それ以降「ちょっと背伸びした」文体を目指せるようになった。ちょっと背伸びし続けていると、やがてその目線に合わせて身の丈も追いついてくるものだ。
読書もインプットも早めにやっておくに越したことはない。それらの種は脳内で時間をかけて根を張り、以降すべての思考に影響を与える考えの幹となる。よい知恵の種を仕込むこと、それらをリラックスした思考の中で人生という時間をかけて育むことで頭の中の果樹園は実りあるものになり収穫の時を迎える
読書は老後の愉しみ、なんてのはもったいない。早めに脳内に取り込むからこそ、その後の全ての思考を通してその知識が脳に根付き、新たな知恵の種となる。それは次の知恵を生み、また次の知識の理解度も上げる。人類の最大の発明である複利効果は脳内でこそ最も働く。全人生をかけたダイナミックな運用
鋭い捉えなおしで認識を塗り替えるLTBコピー
学校で数えきれない無味無臭の知識を詰め込まれた中でも記憶の箱から取り出せるのは「墾田永年私財法」のような絶妙に韻が効いているものだったりする。埋もれない言葉にするには様々な技術がいるが、それを自然と繰り出せるようになるには名作といわれる表現•フレーズの大量インプットが土台となる。
LTB=Life Time Bestコピーだが、まずは直近の例を2例ほど取り上げてみたい。
フジクラの「奇跡に魔法をかける」コピー
創業100年超のBtoBメーカーフジクラが打った初のTVCM。コピーは「再現性のある奇跡を、技術と呼ぶ。」本来一度しか起きない、説明のつかない出来事である奇跡を「再現性ある」と再定義。その矛盾した状態に「それを技術と呼ぶ」とリネームする。技術力に裏打ちされた魔法を自社のプライドに昇華させた
興味深いのは、経済誌「日経ビジネス」がこの時期に「フジクラの奇跡」という特集を組んでいることだ。ジャーナリズムが「奇跡」と呼んだものを、フジクラ自身は「技術だ」と打ち返した。外から貼られたラベルを、内側から定義し直すことでブランドの意志が立体感をもって立ち上がる。
漫画を読むことを肯定する日本財団のコピー
娯楽的な行動に前向きな「意味」を見い出すと、受け手の日常に肯定感を与えられる。この作用をうまく活用しているのが日本財団の「夢の参考書を贈ろう。」だ。娯楽を寄付しませんか、では動機が弱い。ドネーションへの動機付けを強く喚起すると同時に、贈る対象物の漫画の価値自体も引き上げている。
いまの日本人ってどんな人?という質問に対して「諸外国の人々との精神的成り立ちの違い」という視点を加味して回答するならマンガカルチャーで育った人、というのがわかりやすいだろう。画・物語・台詞が詰まった極めて高度な総合芸術=マンガを通して愛・友情・正義や向上心を学んできた民族だ。
LTBコピー:遠距離恋愛を「憧れ」に変えたコピー
捉えなおしコピーの最上級がJR東海シンデレラエクスプレスの「距離にためされて、ふたりは強くなる。」だ。携帯電話のない時代、日曜日の大阪行き最終新幹線に乗り込むと、次に会えるのは何週間も先になる。この東京-大阪という「距離」を試験官として擬人化している。単なる空間から意思的な存在へ
このコピーは遠距離の嘆きに対して「あなたたちは試されているんだよ。だから強くなれる」と言い換える。「試される」→「強くなる」という因果関係の設計により、悲劇を成長物語に書き換えた。移動という機能を語らず「移動する意味」を語る。そのことで、新幹線は「愛を守るための装置」になった。