くすぐり表現8つのアプローチ。SNSの普及でやりやすくなった「キャラクター運営」の転がし方を考える

SNSによってやりやすくなった施策のひとつがキャラクター運営。イベント単位ではなくデイリーでコストをかけずにキャラを転がしていける。また着ぐるみの場合は言葉を使うのが難しいが、SNSは自由自在に言葉を繰り出せる。くまもんなど有名どころはもちろん、他にも意外な所に10年選手が生息している。

その一例がカルビーが10年間運用しているXの非公式キャラクター「黒エビ」だ。非公式ゆえに自由に、特定の商品に関わらずに時に黒い発言もするキャラクターはじわじわとファンを増やしていた。徐々に高まってきた人気を受けて、昨年秋にSUZURI内のカルビー公式オンラインショップでグッズを発売した。

広告コピーもキャラクターの発言も、すべてはコミュニケーションなので相手と送り手との胸の内に共通して存在する何らかの気分やトピックをとっかかりにする必要がある。どのテーマを選び、それをどんな味わいのやりとりにするのか?日常生活にスッと素敵な解釈を与えてくれる存在は無敵になれる。

弊社がブランドコピーを担当した淡路ビーフも、そのブランドパーソナリティ設計という骨子を「肉付け」していく取り組みとして22年5月から「モーコ」というキャラクターを運営中。以前紹介した「くすぐり表現」を軸に、じわじわとコミュニケーションを積み重ねている。過去の投稿事例を8つのアプローチに分類して紹介してみよう。

キャラクターの転がし方:8つのアプローチ

くすぐり表現のアプローチ例①:嬉しい気分に薪をくべる

コピーライターの師匠は、広告コミュニケーションの基本は「相手の言ってほしいことを言ってあげること」と常々言っていた。キャラクターが人々に話しかける時も、ペインをネチネチ指摘するのではなく、うれしい気分をさらに膨らませる発言をすべき。

▲誰しも一番嬉しいのが「土曜日の朝」。牛目線でちょっとわからないながらも、一緒に喜んであげる。

▲連休=BBQ祭りという前提。そして、牛=憧れの存在という二重の前提ズラシからの発言。「食べてすぐ寝たら牛になる」といういにしえ構文を下敷きに。

くすぐり表現のアプローチ例②:ちょっとユーウツな気分をなぐさめる

1つ目と逆のアプローチだが、連休明けなど「誰もがユーウツ」なタイミングでは、ちょっと気を逸らして前向きにポジ転できるコミュニケーションがよい。


▲一番つらいのは「連休明け」なので、連休明けの隠れメリットである「平日が一日少ない」ことを人類全体にリマインド。

▲正月明けの成人式を含む3連休は毎年「ありがたい・・」と思える給水ポイント。その祝日に対して、勝手にノーベル賞を贈ってしまう暴挙。

▲連休明けの仕事がはかどらない状態を解消するTipsを牛目線で。

くすぐり表現のアプローチ例③:焼肉ネタ

お肉のキャラクターなので、当然焼肉まわりのネタも転がしてみる。BBQ中に真似して言ってくれたらしめたもの。

▲サンドウィッチマン・伊達みきおの「カロリーゼロ理論」を焼肉に応用。

▲BBQに誘うポジティブなバカ口実を提供。まあ、アウトドアといえばそうなので、あながち嘘でもないのだが。

くすぐり表現のアプローチ例④:時事ネタと牛ネタを絡める

その時々で多くの人の関心が向かっている話題に乗っかるアプローチ。毎日の空気感に呼応してメッセージが組み立てられるSNSならではのコミュニケーション。

▲大谷選手=睡眠を大切にしている、という広く知られた事実を軸に、牛ネタへ展開。「羊を数える」といういにしえ構文を応用して遊ぶ。

▲ワールドシリーズ前後にマルチな存在で大活躍したドジャースのエドマン選手をひきあいに、ブランドタグラインである「いい味だしてる。」の意味性を強化。

くすぐり表現のアプローチ例⑤:2-3回に1回はブランドメッセージを届ける

ブランドのことを語りすぎても押しつけがましくなるが、語らなすぎたらやっている意味がなくなるので、適切な頻度と温度感でブランドメッセージを語る。

▲脂っこすぎない淡路ビーフならではの食後の満足感を描写。その流れでメチャメチャそれっぽい(ありそうな)パーパスを宣言し、直後に否定。

▲春到来の嬉しい気分に淡路島でのBBQを紐づける。よくある「格別」ではなく、「格別で別格」という反転リフレインで斬新な格別感を表現。

くすぐり表現のアプローチ例⑥:牛と人類のカルチャーギャップコメディでくすぐる

流暢に話すしモノゴトも分かっていそうだが、肝心なところはことごとく「カンチガイ」していることでカルチャーギャップコメディの楽しみを演出。

▲そもそも「お正月」というものがよくわかっていない。所詮は牛なのだ。

▲有名な歴史年号を知っているようで、根本的にカンチガイしている(のに全く気づいていない・・!)という滑稽な前提から一転、1300年の歴史と伝統を持つ但馬牛=淡路ビーフの価値に落とし込む。

▲これもわかっているようで何か根本的にわかっていない「所詮は牛」視点がどんどんエスカレートしていく様子を活写。

▲「人類は牛をめざしている」という誤った前提から、勝手な話を展開し、さらに勝手に恩着せがましく話を終わらせる。

くすぐり表現のアプローチ例⑦:季節ごとの生活者の気分に寄り添いつづける

キャラクターを転がすことは、四季折々の生活者の気分に寄り添いつづけること。それによって、生活者の「お供」となる存在になれる。

▲春は新入生に対して「謎の上から目線」で叱咤激励をとばす。牛の独特の食事法である「反芻」を取り出してきて遊ぶ。

▲猛暑の夏のユーウツには「ノストラダムスの7の月の恐怖の大王」を「振り返って考えてみれば・・」的な愉快な捉えなおしで乗り切ろうとする。

▲8月の淡路島といえば「セミの大合唱」。味覚表現の「旨味と甘みのハーモニーが、もはやシンフォニー」にもかけながら、轟音を出すセミに人間的な配慮を求める。

▲モーコはとにかくセミが嫌い。嫌いだからアレコレ考えて何かそれっぽい発見をしてしまう。

くすぐり表現のアプローチ例⑧:突拍子もないアングルから雑談を切り出す

キャラクターの仕事は生活者を日常から連れ出すこと。「どこから持ってきたん?」というようなアングルから急に話題を展開し始めることで、日常に彩を加える。そういえば犬もたまに「どこから拾ってきたんや?」っていう”お土産”を持ち帰る。

▲これは30年前から使われている歯ブラシのCMのシンボリックデータ。今でも使われているが、そんなありふれたデータも見方によっては新たな発見がある。それによってキャラクター性を際立てる。

▲誰もが通ってきた学校カルチャーネタ。英語の「RUN」の活用とランナーズハイを掛け合わせることで「それっぽいけど全然ウソ」な気づきを発掘。

▲以前紹介した「羊ではなく牛を数える」を応用研究して、翌日にワープするナンセンスな発明を披露する。

▲クリエイティブ発想法のネタを得意のお肉領域に転用する。すると、絶妙なダジャレが誕生。

 

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