2025年のMLBワールドシリーズは、とんでもない伝説の戦いとなった。3勝3敗で最終7戦までもつれこんだゲームは延長11回に突入。9回裏、1アウト2,3塁に追い込まれた盟友スネルを、見事救援した山本由伸がその後11回まで投げて胴上げ投手(胴上げ文化はないが)となった直後のコメント取りでは、インタビュアーが興奮して泣いてるほどであった。 前日先発6回投げて、その翌日に156km出すのは凄い。
絶対勝てそうもない敵を前にハラハラしていても、映画なら「今100分だから残り30分でカタはつく」と思うしゲームなら「リセットすればいい」が、スポーツはほんとにリアル。終始超えられない壁感を保ったブルージェイズとの10日間はひさびさの鮮烈な体験。日本人は、大谷センパイからまた野球の醍醐味を教わった。
大谷翔平は、長嶋茂雄と力道山を足したような存在。戦後復興の太陽となった長嶋のように、幸福度最低で目標を喪失した現代の日本人に「目標は自分で作って自分で叶える」ことを体現して示す。そして力道山以上に世界相手に大暴れし、スカッとしたカタルシスと自信をくれる。「感動をもらった」じゃダメで、次は自分。
伝説的な試合を堪能するには、それなりの時間を投入しなければならない。それで「感動をもらった」ではもったいない。とある調査によると甲子園に感動する人は5.3倍熱い人生を送り、2.2倍仕事に情熱を注ぐという。もらった感動は、大人たちの明日のエネルギーに確かになっているのだ。そこで今回は、ビジネスを「メンタルスポーツ」として捉え、それを野球を例え話として解釈することで日常業務の捉えなおしを図っていきたい。
メンタルスポーツとしてビジネスを捉えなおす
ビジネスというのは野球やバレーボール、ゴルフと同じくワンプレーごとに間があるメンタルスポーツなので「流れ」がある。怠惰や凡ミスは野球のエラーやフォアボールのように、直接的なダメージに加えて「流れ」を悪くする。「なんかダメかも感」が伝染し、ネガティブループを起こす原因になる危険因子。
イケてない仕事を認めることは、そのチーム全体の基準を下げることを認めることを意味する。看過するわけにはいかない理由は、そこにある。僕たちはもっと、高尚な目的のために集まったはずだ。人生の貴重な時間の少なからぬ割合を共に投じる約束をしたはずだ。その基準って、これなんだっけ?という確認なのである。
なぜ誤植はダメなのか?
ビジネスの世界で一番目に見えやすい「凡ミス」が誤植だ。その人がメッセージを綴る際の本気度や集中度がそのまま反映されるので、誤植だらけの雑なやりとりをしていると「割れ窓理論」で職場が心理的に荒廃してゆく。提案書や原稿であれば「誤植をする程度の集中力で作られたもの」なので読んでもらえない。
私の担当していた外資系クライアントは広告表現の提案時、1文字でも誤植があると「おひきとりください」だった。「そんなプロ意識のチームには活字を任せられない」という理由で、それは前段のマーケ資料でも許されない。徹夜して仕上げたクリエイティブも「見る価値がない」とバッサリ切られるのである。
なぜ「数字」にこだわるのか?
「スポーツは数字のドラマである」ということからNumberという雑誌は生まれ、創刊当時は「Number 1」「〃 2」と誌名自体をカウントアップした。勝敗を決める得点はもちろん打率や防御率にも物語は宿る。ビジネスももちろん数字のドラマである。KPI/KGI設定はスポーツを盛り上げるルール設定と同じ。
有能な人が集まるだけでは、物語は何も起こらない。そこにはゲームが必要で、ゲームにはルールがあり勝つための達成基準がある。数字を追わないビジネスは、ただの未来のないサークル活動である。「皆でこれを達成する」と約束して、その約束を何が何でも守ろうとするアレやコレやがドラマとなり、乾杯の動機になる。
スケジュールとは何か?
スケジュールも本質を分かっていなければ、見た目は「っぽいスケジュール」だけど、全然機能していないスケジュールになる。スケジュールとは一連の制作プロセス上のプロ同士の「最高のアウトプットをレーンに載せる約束」なので、「できれば守るペース配分」ではない。これを破るのは「ダサい」こと。
山本由伸も前回登板はスプリットが落ちなかったり、佐々木朗希も球速出ない日もあったり。体調管理しても人間のカラダは日々コンディションが変わる。これはビジネスパーソンも同じ。スケジュールにバッファを持たせることは、しっくりこない日や何だか乗らない日に無理やり作業するのを防ぐための知恵
いい仕事とは何か?
ビジネスにおける士気を上げるプレーのひとつが「前に進める」こと。送りバントや進塁打のように「進んだ感」とちゃんと仕事をしてくれた感謝が生まれる。理屈こねくり回して前に進めないのが一番ダメ。複雑な理解コストだけが発生するから。理屈を取り出したら同時に現状に当てはめて鮮やかに整理せよ
ビジネスにおけるファインプレーは、クリエイティブジャンプなどの「超整理力」を発揮して絡み合ったフクザツな概念を一本にまとめる仕事。各部署の価値を一本にまとめるMVVやスローガン、あれもこれもをヒトコトで伝えるコピーなどはランナーを返して塁上をスッキリさせる一本のホームランである。
正しい努力の積み方とは?
ルーティンを決めることは、自分の人生設計を決めること。メンタルとフィジカルをどの方向に毎日積み上げていくか?決めたことを着々と実行すれば自動的に目標は実現されていく。イチローや大谷翔平はそれを世界一鮮烈でわかりやすい具体例つきで教え続けてくれている。しごでき目指すならまず野球観
おまけ:出世する秘訣とは?
よく居酒屋で「小学校時代は足の速いヤツがモテたよね~」みたいな話題が出ますが、調査の結果「足の速い小学生はオトナになって経営者や役員になる割合が圧倒的に高い」ことが判明・・会社でブイブイゆわしてるヤツが、小学校時代からビュンビュンゆわしてたなんてゆるせんやろ!!
運動会のスターは、いつまでスター性を保てるのか?学生時代のスクールカーストは一定「社会の縮図」になっている
長嶋茂雄がプロ野球界、いや国民的スーパースターになるまでの日本では「野球なんぞで給料をもらうなんてけしからん」と考える人が多かったという。今ではそんな人は少なくなったとはいえ、スポーツの社会的役割や本来の価値が正しく認識共有されていると[…]
「この長い物語も、おわろうとしている。人は死ぬ。竜馬も死ななければならない。その死の原因がなんであったかは、この小説の主題とはなんのかかわりもない。」司馬遼太郎「竜馬がゆく」最終話の一節だ。久しぶりに全8巻を再読し、英雄の人生に想い[…]
物語の中でも独特の煌めきを纏う「伝説」。長い時間をかけて人々に語り継がれる中で虚実が絶妙に織り混ざり、聴く者の妄想を無限にかき立てる。ナラティブの最もプリミティブな形態であり、最強の力を持つ「伝説」が生まれるには、どのようなプロットが必[…]