よく会社の”アタマのいい人たち”からライティングについて型化してほしいとか、トレーニングしてほしいと言われるのだが、これが結構難しい。たしかに文字を書くことは誰にでもできる。だが、それをいうならばボールを投げることだって歌をうたうことだって誰にでもできるよね・・・つまり、そういうことなのだよ。
「書く」など誰にでもできる仕事こそ、誰もやってない膨大な努力を数十年に渡って積み重ねる「異常な愛情」だったりが必要で、それ無しのライティングに市場価値はない。これには一定の「欠落の自覚」が必要で、「書けない自分」には価値がないと本気で思ってないと「書けない状態」からの突破力が出てこない。
あとは地頭やセンスも一定必要だろう。センスがないと試行錯誤が本当に錯誤の積み重ねになり、妙なクセがついて抜けなくなってしまう。一定の言語化力がつくと、具体の現象から無限に気づきや価値を取り出せるので、独自の視点を紡いでいける。それらは相互作用して自己増殖的に増加し、ひとつの世界観を形成する。
「書く」ことの本質を考える
書くことの実態は、「書く」ことではなく思考そのものである
書くことの実態は「書く」ことというよりも思考そのものなので、型化は難しいし本質ではない。ど真ん中の思考を磨かねばWhat to Say?の迫力が出てこないし、新たな価値や世界観を打ち立てることもままならない。ライティングのテクニックから入ると根幹の「思考」に歪みが生まれるので健やかに育たない。
システム的なもの以外の「書く」やデザイン領域においてテクニック収集は不要。名作大量インプットした上で制作の都度、本質的に向き合って考えもがいてたら自然とできるようになるし、思考の根っことテクニックがオーガニックに接続されるので応用も自由自在。小手先から入ると深いところにたどり着けない。
仕事が早い人は逆算型が多い。解を先に掴んで、最短距離でそこへ道筋をつけるから無駄もなく納期も遅れない。ただパッと解が見えるようになるには棋士の定跡学習のようにいいものを長期に渡り大量インプットする基礎訓練が必要(私も大学時代に8,000のコピー&コンセプトを丸暗記した)。積上げ型だと過程での学びは一定あるが、答えに辿り着けないことも多い。
思考の「考具」は使い込んでナンボ
思考のフレームワークは型を知ることには何の意味もない。それを実務を通して角が丸くなるまで使い込み、カラダに馴染ませる10年単位のプロセスの集積こそが人的資本価値。広告だと意識せずとも複数の型を通したアイデアの鋳型がパッと出てくる状態。結果物もそうだが、着眼点、思考全ての精度が上がる。
格闘技において覚えたての技を実践で使うことはないように(使ったら負けるか、あるいは大怪我する)、ビジネスの現場においても使い慣れていないフレームワークをぎこちなく使おうとしてはならない。「今」学んでいるそのフレームワークは、アタマの中で充分に転がして思考回路に落とし込んでから使うべき。
「考具」を自作することが最高のクリエイティビティである
ビジネス自体を作ることが大きなクリエイティブだとするならば、広告表現は小さなクリエイティブ。だが、「モンタージュ」のように表現手法自体を作り上げれば、それは大きなクリエイティブといえる。仕事を通して自分なりの表現手法や演出法を編み出していくと、独自性につながるし「作風」というものが生まれてくる。
ライター採用の見極めはその人独自の「文体」があるかをみれば一発。まわりをキョロ見して「っぽい文章」を書いていては駄目(ここで99.9%落ちる)。自分の本業の「書く」こと自体も再定義しようとしない人が、顧客の価値を再定義できるわけがない。「っぽい文」しか書けないとAI文の改善もできない。
編集者とコピーライター。同じメディア制作という領域にいながら、実はあまり交わることのない両者。書くことでメシを食っていき…
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