広告コミュニケーションは生活者の気持ちに入るためのもの。生活者が一気に胸襟を開く方法のひとつが「後ろめたさを肯定する」アプローチ。小さな共感ではなく、大きな「わかってくれてる感」で包み込む。ペインをネチネチつくブランドよりも、自分の弱さや小さな悩みをわかってくれて、さらに赦して心の重荷を下ろしてくれるブランドの方が100倍好きになれる。
生活者が生きる世界は正論やべき論に溢れていて、ニンゲン本来の欲求は悉く蓋をされている。無難に生きるには受け入れるしかないが、膨大な制約をこなしきれずモヤモヤする。この中で自分らしく生きるためにはニンゲン由来の別軸の正論が必要で、それを具体的なアイテム付きで提案するのがブランドだ。
心の重荷を下ろす「後ろめたさを肯定する」アプローチ
事例①:サボりを肯定するマウントレーニアのアプローチ
生活者の気持ちに寄り添うには、後ろめたさを肯定してあげること。森永乳業のマウントレーニアは「偉大なる、ひとやすみ。」をブランドメッセージに掲げ、日常の中の“サボり時間”を肯定するコミュニケーションを展開。プライベートでも仲の良い菅田将暉と仲野太賀が撮影中に息抜きをする様子を描く。
無難な言葉ではなく、あえて背徳感を纏った言葉を選定することで、メッセージの意志を尖らせて生活者から強い共感を勝ち取ることができる。マウントレーニアのTVCMは、時には息抜きも必要だ、ではなく「サボってもいいじゃない」まで思い切って踏み込むことで後ろめたい感情を強く肯定している。
マウントレーニアはキャスティングも効いている。菅田将暉が23年に起用された際の「同じ93年2月生まれでダチ感がある。僕にとってはほぼ仲野太賀みたいなもの」というコメントから実際に仲野を起用。プライベートでも仲の良い二人の自然な雰囲気が「サボってもいいじゃない」のメッセージ性を強化している。
事例②:妥協から楽しさへ転換する「サントリーのノンアル!」シリーズ
ブランドの爽快感は生活の肯定感で駆動する。「サントリーのノンアル!」シリーズはノンアルの価値を「妥協から楽しさへ転換」するために「攻めのノンアル」がコンセプトのCMを制作。「ココロだけプハーっとしたいときもあるよね」というタグラインを軸に背徳感を攻めの楽しみに振り替える発想を提案。
商品カテゴリまわりのパーセプションをリードすべきは、生活者ではなくあくまでメーカー側。昼間にノンアルを飲むのはちょっとだらしないかも・・という(いわゆる日本人的な)認識を「いやいや、ここから攻めるために飲むんだ!」というテーゼでひっくり返そうというサントリーの意気はすばらしい。
事例③:おひとりさま需要を迎えに行くデニーズのアプローチ
顧客が後ろめたさを感じる障壁を取り払うことで積極的に迎えに行ける。一人利用客が増加傾向だったデニーズは「ソロデニさん」向けのキャンペーンを実施。スポデニさん、デニリモさん、デニリラックスさん、デニモニさん、デニやどりさん、デニ〆さんと定義したそれぞれ向けのメニューを開発した。
明るくて見通しのいいファミレスは、一人で行くには周囲のまなざしが気になる場所でもある。お店にも歓迎されていないんじゃないか・・という不安感を客がもし抱えているのであれば、迎える企業側としてはテーブルの汚れを拭き取るように積極的にそれを払拭しにいく必要がある。
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