書き手の欺瞞と「文字が文字通りに伝わらない」問題

ライターにも編集寄り、広告寄りなど様々だが、書き手としての共通する責任とは何だろうか?おそらくほとんどの人が「正しい内容を、ロジカルに分かりやすく書いて期日通り納品すること」と答えるに違いない。これはこれで決して間違いとはいえないが、あくまでプロとしては最低限のレベル。大学のテストでいえば60点の解答である。プロの書き手としての責任とは「伝えたい内容を確実に伝え、狙った行動を引き出す」ことだ。ここの「とは論のかけ違い」は結果においてとんでもない差を生む。

すれ違う書き手と読者

以前「揉み手構文と白文字系文学」でも指摘したが、99%の書き手は「納品」がゴールでそれ以降の「読者にどのように読まれたか」についてはノータッチだ(データがフィードバックされないのだから仕方のないことでもある)。しかし、一パラグラフずつ読者の反応をデータ分析し続けていくと、書き方は全く変わってくる。

数字ごしに見る読者は自分勝手で残酷だ。少しでも回りくどい部分や「言葉のあたりまえ体操」が続くと、即座に離脱する。受け手は受け手の都合で読むのだから当然だ。問題は、これに対して書き手も書き手の都合で書いてしまっていることだ。文字単価制という非本質的な仕組みもその一因だし、そもそも書き手の力量不足ということもある。

文字は、文字通りに伝わらない。

まず最初に徹底的に自覚すべきは「文字は、文字通りに伝わらない」という事実だ。たとえば「Aという人はBとCとDという長所があり〜」と整然と書いたところで、受け手はせいぜい印象的な1つくらいしか受けとらない。記事を一本5,000文字書いたからといって5,000文字分の情報がすっかり伝わるなら読者全員東大に入れる

ここが編集畑の人は特に理解できないようだ。依頼主から「これだと表現として当たり前すぎて弱くないでしょうか?」と言われても「ほらここにちゃんと書いてあるじゃないですか」で話が噛み合わない。間に挟まれて途方に暮れる代理店や媒体の営業を私は何度も目の当たりにしてきた。書いたから伝わる、のではなく伝わるように書くのがあなたの仕事なのだよ

文字が文字通り伝わらない問題
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