Slackはシンプルかつ必要十分なUIや「スコココっ」というメッセージ着信音が演出するテンポ感溢れるUXなど、それまでのE-mailやグループウェアにはなかった画期的なツールだ。一方で、テンポよく返しているうちに何をしたかわからないまま一日が終わってしまうということもあるのだが、この点については問題視する人は少ないように思われる。事業会社においては社員同士の活発な情報のやりとりで事業を進めていくこともあり、相応のテンポ感が必要だが、何でもかんでも即レスすればいいというものでもない。作業に集中する時間と、息抜きを兼ねてSlackを返す時間を分けるのが時間の使い方としては理想的だろう。
あらゆる仕事のやり取りは、2種類に分けられる
さて、クライアントワークの場合はどうだろうか。基本的に「即レス」が望ましいとされているし、実際私の知る売れているフリーランスはほぼ即レスを当たり前のように実行している。しかし何でもかんでも即レスすればよいというものでもないように思う。私の場合は、あらゆる仕事を次の2種類に分類し、リアクションを分けるようルール化している。
まず1つは「時間をかけてもアウトプットが変わらない仕事」だ。YES/NOでカタがつく問題や、あの資料どこにあったっけ?的なやりとり、また3分以内に即答できる案件。これらは時間をかけてもアウトプットの質が変わらないが、実は即レスによってアウトプットの「評価」を大きく上げられる案件だ。日常業務におけるほぼ9割のやりとりはこちらに属するので、ほぼ即レスというのが私のスタンスだ。一秒経過するごとに、本来獲得できる「即レスポイント」はどんどん減少していく。社内の人間よりもスピーディにやりとりできる人、という認識を獲得できればこれはかなりの信頼感につながる。
もう1つは「時間をかければアウトプットの質が上がる仕事」だ。企画提案はもちろん、軽く見解を求められたりする場合。ざっと調べて情報をインプットした上で、一晩アタマの中で転がして睡眠を挟んだら圧倒的に質が変わる場合、これは迷わず時間をかけて返答する。この部分こそ、競合ではなく自分にしか提供できない価値を示すチャンスであるからだ。この場合のポイントは、何も言わずに翌日返答をするのではなく、「少し考えたいので、明日の〇時までに回答する」旨を即レスすることである。
仕事の信頼は「小さな感動」の積み重ね。
USJを復活させる、などの大プロジェクトを成し遂げたらそりゃあクライアントはおろか日本中からの信頼を獲得することができる。しかし、そんな仕事は滅多にあるものではない。現実のほとんどの仕事において、信頼を構築する一番確実で効果的な方法は「小さな感動」を積み重ねていくことである。先ほどの後者の例だと、ただ1日寝かして提案を返すのではない。即レスした上に、「〇時までに回答します」という小さな約束を果たすことでも信頼感を積み重ねることができる。そしてその内容が期待を超えたものであると大小3つの「感動」を短期間の間に同時に与えられる。これをコミュニケーションの度に律義に積み重ねるようにしていくと、もれなくいいことが起こります。