ある時「あなたにとって音楽とは何?」と聞かれたレディーガガは答えました。
「私にとって音楽とは、聴くものではなく観るものよ」
時まさに、YouTubeの時代。音楽はCDアルバルで聴かれるものから、YouTubeで映像とワンパッケージで消費されるものに変わりつつあった。その時代の動きに合わせ、彼女はいち早くミュージシャンとしての自分を再定義したのだ。
立ち位置が違う人は、「とは論」が違う。
「とは論」を徹底的に考えさせたことで有名なのは、プロ野球のノムさんこと野村克也だ。野球に対する姿勢を根っこから変えることで、野村再生工場と呼ばれるドラマチックな変身を数多く演出した。だけではなく、とは論を書き換えることで古田、高津、真中などの指導者となる人材を育て上げ、そのイズムの再生産を果たしている。
とは論を更新する人は、自分自身の圧倒的な活躍はもちろん、その卓越したパフォーマンスの「他者との違い」を言語化することで業界全体のレベルアップに貢献する。
サムライの国からの「二刀流」の刺客が更新するもの
では、大谷翔平が更新したものとは何であろうか。野球少年にとっては、「日本人でも、メジャーリーグでホームラン王」も目指せること。アメリカ人も含めた世界の野球界においては「二刀流(まさに宮本武蔵)」つまりメジャーにおいてエースで4番がありうるということ。これはまさに西洋に対して初めて「逆・黒船」をかましてやった瞬間かもしれない(まあでもそれはバブル期にロックフェラーセンター買った頃にあまり喜ばれないカタチで達成してるかもしれないが)。
でも大谷翔平の更新したものはそんなもんじゃなくて、「超然とした個人の意志は、フィクションを軽々と超えられる」ということだろう。彼の凄さはこの「超然とした感じ」にある。ニーチェの生み出した概念「超人」の具現化かもしれない。ストイック感も感じさせないし、普通なのに圧倒的なんだ。