「好き」をダダ漏れにするって、イケてる!一億総オタク社会の新たな共感ポイント「偏愛」の科学

オタクが現実からの逃避から余剰知性の遊休的な発露へと昇華し、ある種のマチズモ化したゼロ年代。その後スマホとSNS、動画サブスクの普及で一般層にカジュアルダウンされ、現代はすっかり「一億総オタク社会」である。推す=代替行為ではなく、人々は推す行為そのものに意味とテンションを見いだす。

一億総オタク社会のメインエンジンは「偏愛」である。自らの興味のパラメータに従って、無限に愛情を注げる対象に没入したり、ハマったり(沼に)する。そして「偏愛する様子を愛する」という新たな偏愛が発現。この新たな気分が育まれた土壌はアメトークや好きなものの話などの番組だろう。

現代において「偏愛の対象を持つ」ことは幸せなことであり、それをダダ漏れにする様子は微笑ましく受け取られる。共感の間口と強度が極めて高いこの感情フックは、広告コミュニケーションにおいても有効だ。

一億総オタク社会の新たな共感ポイント「偏愛」活用事例

博報堂は「生活者発想技術研究所」内で、強い「好き(偏愛)」を持つ生活者と共に研究を行うコミュニティ型プロジェクト「偏愛会議」を開始。若年層から始まったトレンドが全世代に拡がっており、今や推し・偏愛を持つ人は10-60代で過半数。ここを深掘りすることが生活者発想の理解につながる。

事例①:偏愛を没入的な共感に結びつける「森永パルム」

愛好者のいるブランドは、その偏愛を垣間見せることで共感層=ファンの裾野を広げられる。前年比+7%で20周年を迎える森永乳業パルムは竹野内豊が偏愛するCMをOA。同時に週2-3本食べる人を”パルムラバー”と定義し、「マイファーストバイト」など一段階強い行き過ぎた愛に五感で没入できる展示会を開催。

森永パルムの勝ち筋は「竹野内豊×偏愛」という建てつけにある。「どうする?GOする」や「ROOTS飲んでゴー!」など、すっかり「悲哀系上司」が背中に定着しつつある竹野内だからこそ、溜まりに溜まった「何か」を解放させる「どこか」に説得力が生まれる。その「どこか」は、もれなく偏っているのだ。

事例②:化学系BtoB企業の「偏愛」で愛されるレゾナック

「偏愛」も現代においては愛されポイント。アンバランスな分だけ揺さぶりのチカラも強い。23年から滝藤賢一を起用するレゾナックは研究開発の合間に「半導体材料ゲーム」するCMを制作。「銅張積層板」「CMPスラリー」などの半導体材料名を次々と挙げていき、遠藤が合いの手としてその材料の特徴を語る

レゾナックの「偏愛」CMにおいては、マニアックなやりとりを登場人物たちが照らいなく「楽しくやっている様子」を描写していることもポイント。心底まっすぐに「バケガク」してる様が今っぽいし、リケダンリケジョの「My reserved 青春」な感じがして素晴らしい。

事例③:架空の企業「偏愛」ファミリーを描く

企業広告は斬新なアングルによって独自の打ち出しができる。マクニカは社員夫婦という設定で子ども(生粋のマクニカっ子)の視点を通した「他とちょっと違うところ」を伝える。「父は小さい仕事をしています。母はサイバー空間で悪と戦ってる」など仕事を紹介しつつ「未来にタネまくマクニカ」を訴求。

現在OA中の朝ドラ「ばけばけ」も怪談への偏愛の話だ。その前の「らんまん」では浜辺美波演じるすえこが滝沢馬琴オタクとして描かれていた。またフリーレンは魔法オタクだし、薬屋のひとりごとの猫猫は毒を倒錯的に愛して自ら人体実験をよだれを垂らしながら行う。「偏愛」は物語上のコアエンジンだ。

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