なぜ日本のタイアップは「片想い」なのか。
代理店時代、メディアに記事広告を依頼することが多かったが期待してあがってきたら「超薄味」てか、無味無臭。広告主のメディア愛を受けてのタイアップなのに、メディアサイドは塩対応。この歪んだ関係性、どうにかならんもんかとメディアサイドに入った。
入ってみて分かったタイアップの現場の問題点は、編集視点のみで作られていること。つまり「書いたものは喜んで読まれる」前提。一方広告の基本は「99.9%は無視される」なので、前提が真逆ということだ。だから「何を読者のココロに残すのか」の緻密な逆算がなく、読後感が読者によってマチマチ。これでは「態度変容」など起こるべくもない。
ライター発注をやめ、広告的フレームワークを用いて自分で記事広告を書くようにしたら、たちまち1記事あたりのアクションが5倍(※)になった。すると、すぐスポンサー数も5倍になった。5記事作るところが1記事で収まるんだからそりゃそうだ。あと5倍の反応を生む文脈はやはり広告主側に「ただならぬ感動」を生むわけで、そのクチコミ効果が大きかった。
※アクション=中間KPIとして追っていた記事→クライアントLPへの遷移率。toCメディアだと3-5%平均のところ、15-25%まで高めた。
その他オリエンシート・提案フォーマットの改訂、拡販資料の整備、社内・社外PR活動の実施など様々な改革を行ったが、最も効いたのはコンテンツそのもののクオリティアップだった。
記事広告の最適文字数は?
まず見直したのは、記事広告の文字数について。誰が決めたのか知らないが、記事広告は3,000文字程度が目安になっているが、論理的に考えて計算が全く合わない。
数字は多少変えているが、toCメディアだと滞在時間や読了率は上記のような感じになるだろう。そこで読者の「読後感」を狙った通りの状態に持っていくためには、1,000文字~多少の飛ばし読みを考慮してもせいぜい1,500文字が限界。3,000文字とはそもそもSEOライティング用の目安であって、ニンゲンに対して書く文字量ではない(完読までに7分半かかるが、果たしてそんなに夢中になって読める記事か冷静に考えてみるべきだ)。読者が全員速読の達人なら話は別だが。
まあこのように、実際中に入ってみると「そもそも論」が掛け違っていることだらけだったので、やればやるだけ結果が出たし面白かった。次に見直したのは「記事広告とは何か?」というイシュー。いわば、記事広告自体の捉えなおしである。
なぜ「記事」で伝えるのか?
冒頭の「無味無臭の記事広告」問題の原因は、この部分の認識が間違っているからである。「広告臭」を出さないように、さりげなさを装うあまり何も残らない文章になってしまう。しかし何も残らない文章ならそもそも無いほうがいい。「広告」マークの付いた記事をクリックした時点で読者は広告だと認識して読んでいる。その人に対して「広告だとバレないように・・」なんて、もはやギャグである。読者をバカにしてはいけない。
記事広告における「記事」とは何なのか?広告なのだから、その目的はただ一つ「態度変容」を生むことである。であれば、記事とは「態度変容を生むための文脈づくり」をするためのものだ。そこまでわかればあとは「How?」に落とし込めばいい。そこで記事広告と同じく「態度変容」に向けて営々と行われてきた「営業トーク」と「テレビ通販」の世界を参照してみると、ヒントが見えてきた。
対面営業における「YESセット話法」は有名だが、これが通販だと1つの商品について5つめの切り口を出した瞬間に購買率が跳ねるという。記事広告におけるリード文~本文の役割とは、商品ベネフィットに関する価値観について読者と「合意」を積み重ねることである。前段部分で合意を重ねながら張り巡らせた「伏線」を、商品登場時に一気に「回収」する。これを綿密に1文字ずつ計算して編み上げられたもの、それが本当の「記事広告」である。
99%の記事広告は、「記事広告」ではない。
このように、「そもそも論」だけでも大胆な掛け違えを起こしまくっている巷の記事広告は、ハッキリいって「記事広告」と呼べるシロモノではない。単なる「記事」だ。広告主にうんざりされてタイアップ自体が絶滅する前に、そろそろ各媒体ともに定義を見直す必要があるだろう。今回紹介した他にもナショクラを中心に150本ほど執筆→閲読分析→レポーティングを行う中で、様々なノウハウを生み出してきた。具体的なTipsは「このろくでもない、すばらしき記事体広告の世界へようこそ 」で詳述したので興味があったらまた読んでみてほしい。
また、記事広告の執筆は20万円/本で、メディア拡販のコンサルティングやライティングの監修の仕事も受けているので、迷えるメディア担当者やブランド担当者は気軽にご相談ください。
2016年~2020年の間に記事体広告で掲載した記事広告コピー、および2021年独立以降のコピーをまとめていきます。随時…
以前の記事で読了率を上げ、さらに記事アクションを最大化するにはリード文の「掴み」が全てであると述べた。それでは実際どうすれば読者の心を冒頭で掴めるのか。過去150本の記事広告を執筆し、また記事の反応分析から広告主へのレポーティングまで繰り返[…]
TCC(東京コピーライターズクラブ)などの「文壇」のないEditorial AD=記事広告の世界では、良い/悪いの尺度が業界的に共有されていない。このあたりの問題意識については、以前noteにて「良い記事広告とは?」というテーマでまとめたの[…]
はじめまして、神保と申します。広告屋さんです。新卒から10年超、広告代理店に勤務した後、Webメディアにて記事体広告(≒…