映画やドラマ、アニメの面白さを決定づける一番の要素はヒーローのカッコ良さではなく悪役=ヒールの魅力。スターウォーズといえばルークスカイウォーカーではなくダースベーダーだし、ドラゴンボールの一番人気はフリーザ。また大和田常務のいない半沢直樹なんて考えられない。この原則は企業の広告活動にも通底する。
ブランドをヒールの魅力でブーストさせる現場は、SNSによって着手しやすくなったキャラクター運営だ。一定の人気が定着したあとには停滞期が訪れる。ゆるふわコミュニケーションだけでは飽きもくる。そこでそのゆるふわの世界観を揺るがせる陰の存在=ヒールを登場させることで世界に陰影が生まれる。
暗黒面によって明確になるブランドの陰影
事例①:サンリオの「やさぐれかわいい」ヒール=クロミ
ヒールの活躍が世界観を牽引する。サンリオは”自称マイメロディのライバル”であるクロミを立てたバースデープロモーション「# 世界クロミ化WEEK」を実施。都合の良いだけの話は信じないZ世代に向けて、ナラティブフックを散りばめながら「アタイはアタイ」と芯があって人間くさいクロミを推した。
ひとクセあるやさぐれキャラクターはLINEスタンプやSNS上での使い勝手も良く、サンリオキャラクター大賞では2020年頃からマイメロやキティーちゃんを抜いてTOP3の常連になっている。サンリオが掲げる「誰も、ひとりにしない」のスローガンにも適っている。
事例②:勉強しようとする子どもの心のスキに入り込むヒール
主役が輝くには、魅力的なヒールが必要。というのは映画やドラマだけではなく、広告でも同じ。明光義塾はコンセプトの「YDK(やればできる子)」のヒール役として「サボロー」を登場させた。勉強しようとする子どもたちの心のスキに入りこむショッカー風の悪友キャラの存在で、広告記憶が鮮明になる。
「YDK=やればできる子」だけだと、ちょっと弱い。確かにターゲット層はみんなそうなんだけど、だからこそ言葉のあたりまえ体操的なニュアンスがある。そこに正義VS悪の普遍的対立構造を持ち込むことで当たり前のメッセージに立体感を生み出すことに成功している。
事例③:ぐんまちゃんに強敵出現
キャラクターは鮮度を維持するために運用型の側面も持つ。主人公を引き立てるために必要なのがヒールだが、30周年を迎えるぐんまちゃんは饒舌な敵役「ぐんまさん」を登場させる。「先輩、ユルいだけじゃこの先キツイっすよ」と厳しい言葉をかけることで改めてぐんまちゃんを応援したい気持ちを喚起する
キャラクターって世界観があるので、ともすれば「自分とは別世界の話」という受け止められ方をされてしまう。それを回避するためには、彼らのストーリーの中に我々人間と同じような葛藤や悩みを混ぜ込むことが有効。笑顔の裏の「小さな悩み」こそ、共感ポイントになる。
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