自分自身のハートをラボにする。「気分」を大量生産する仕事の基礎研究

ブランディングとは何か?一言でいえば、あるシンボル(=ブランド)にまつわる「好ましい感情」を人々のココロの中に積み重ねていくことだ。我々は一生を通じて様々な人々と関わるが、同じように数えきれないほどのブランドとも関りを持つ。購入する前から、商品から我々への広告という挨拶によって既に関係性は始まっているのだ。広告の仕事とは、会ったこともない大勢の誰かに対して気持ちのいい挨拶をし続けていく行為であるともいえる。その挨拶の精度を上げるには、他人の気持ちに対する感度を上げていく必要がある。

他人の気持ちは、自分の気持ちを通してしか知ることはできない

広告で担当する案件の多くは「自分はターゲット外」であることが普通だ。男性コピーライターが女性のシャンプーや化粧品の広告を作ることはザラにある。自分がターゲットではないからといって、イタコのように受け手の気持ちになりきって書こうとすると、往々にして失敗する。所詮他人の気持ちは他人のもの。どんな優秀なカウンセラーでも恋愛の達人でも、他人の気持ちを直接手に取ることはできない

では、どうすればよいのか?ルネ・デカルトの「我思う、故に我あり」ではないが、確実にいえることは自分のココロは今企画に取っ組んでいる自分のアタマとダイレクトにつながっているということだ。だから、自分の中にある確かな「ココロ」を通して辿り着くしかない

「腑に落とす」を積み重ねる、という修行の日々。

コピーライターとは、自分自身のハートをラボラトリーとして日々実験する人。グルインやリサーチでとれるデータは、定量/定性問わず所詮はデータである。データの意味を自らの解釈によって「腑に落とす」ことを積み重ねることで、はじめて他人のハートをある程度狙って刺せるようになれるのだ。

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