好きなものを好きといえる時代。歴史オジサンのアイドル化を生む今の気分とは

広告の流れは一昔前の認知獲得全盛の時代からパーセプションの更新(捉えなおし)の時代に移行しているが、何もこれは広告だけに起きている現象ではない。歴史や科学などあらゆる分野が再定義・捉えなおしの流れに入っているといえる。

再び歴史が動き出した

新資料の発見により、これまで謎に包まれていた明智光秀の新たな人物像が浮かびあがったことは記憶に新しいが、映像解析技術の進歩や相次ぐ新資料の発見により、今再び歴史が動き出している。長年の歴史の常識が塗り替えられる瞬間のダイナミズムに立ち会えるのはワクワクする体験だが、これを導いてくれる熱き語り部が、今熱い

 

歴史界を熱くしているナラティブの担い手が、このお二人。NHK「英雄たちの選択」はまさに歴史の捉えなおし番組といっていいが、レギュラーでいつも見どころを熱く解説してくれる歴史学者の磯田道史さん(右)と、磯田さんの大親友である城郭考古学者の千田嘉博(よしひろ)さん(左)だ。二人とも抑揚が効いて話が分かりやすい上に、なにより楽しそうに話すので見ているだけでつられて楽しくなってくる

好きなものを好きといえる気持ち。

90年代初期、槇原敬之が「どんなときも」で歌った「好きなものを好きといえる気持ち 抱きしめていたい」という歌詞。逆にいえば、当時はいえなかったということだ。世の中の価値観は「イケてる/イケてない」に二極化され、「イケてる」グループに入るためには「ノリ」という振る舞いが必要という地獄のような時代だった。時代のトレンドを追うことがイケてることだとされ、一年前のトレンドを引きずっていると「ダサい」とされた。今考えればそれこそ表層的で相当ダサいのだが。。

時代は変わって時は令和。一億総「オタク憧れ」であり、誰もが自分の「沼」を持ちたがる時代だ。そんな中、人生をかけて歴史の沼にハマりまくってきた歴史研究家のオジサン達は、今最高に輝いている。なまじアイドルよりも、千田さんが山城でキャピキャピしてるほうが100倍楽しい

「世界の面白がり方を知る」という喜び。

この流れのお膳立てをしたのは間違いなくアメトークだと思われるが、好きなものを好きといっているオトナを時代は見たがっている。シラけ時代のシニカルな態度よりもこのほうが遥かに前向きで明るいし、なにより自分の知らない分野の魅力を知ることは「世界の面白がり方を知る」ということだ。この世の中の素晴らしい部分に目を見開く感性である「センスオブワンダー」発動のためにも、是非「英雄たちの選択」をwatchしてほしい。

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