前回記事において、今後のオウンドメディアはナラティブの起点となるべきであるという話をした。それを受けて今回は、具体的にどのようなコンテンツによってどんな心理作用を生んでいくのかを考えてみたい。
私たちが「態度変容」する瞬間
あらゆる広告コミュニケーションの目的は、再現性のある購買行動を生む「態度変容」である。言い換えれば、そのブランドの商品ジャンルにおける消費者ひとりひとりの購買ポリシーを書き換えることで、自社ブランドが選考され続ける状態を生むということ。
そこで、自らの体験を振り返ってみてほしいのだが、自分の購買ポリシーが書き換わった時にそのきっかけはひとつではないはずだ。TVCMによって認知はしていたがまさか自分が買うとは思っていない。でも実家に帰ったら親がドはまりしていたり、SNSでいつも見ている人も何人か買っているようだ。それぞれの人たちの個性で、それぞれの言葉による紹介がなされている。その各シーンの印象の断片が積み重なり、ふと「買ってみようかな」と思う。
鍵は、「同時多発的」な気づきの連鎖。
私はこれを同時多発的な気づきの連鎖と呼んでいるが、これを意図的に発生させる装置がこれからのオウンドメディアなのである。そして、さきほどのSNSでの1人1人や「親」やTVCMなどそれぞれの接点が1つ1つのコンテンツとなる。結局のところ、1つ1つの接点から残る印象は1つなので、1コンテンツ=1メッセージが基本となる。現在のオウンドメディアのように、3,000文字ものテキスト(科学的には読了までに7分半かかる。どれだけ面白いコンテンツなのだろう・・・)を書き連ねて、書いた方も読んだ方も、何を書いたか何を読んだかさっぱりわからん状態ではいけない。
受け手に何を残すためのコンテンツなのか。そしてそれらを複数組み合わせることで、総体イメージがどのように形づくられていくのか。そこを逆算しながらコンテンツ設計・制作を行っていく。例えばAという志向のクラスタに対してはB-C-D-E-Fというコンテンツ群に接触させて態度変容に導くが、真逆のZという志向に対してもV-W-X-Yというコンテンツ群をあてることで自分ゴト化させる、というように狙うクラスタごとに同時多発的気づきのカスタマージャーニーを描き、そのコンテンツを準備していくのだ。