隣接しているのに遥か遠い2つの国。「編集」と「広告」の住人の考え方の違い

広告業界の大きな流れとして、2009年に出版された本田哲也さんの「戦略PR」が発端となり、PR施策による「お膳立て」の上で本キャンペーンを投下するという手法が一般化した。この流れの中で、お膳立ての肝である編集目線を持った広告クリエイターやブティック(嶋浩一郎さんの博報堂ケトルなど)が台頭。私も編集を学んだりメディアの編集部に入って広告制作したりと、その流れに乗っていた一人だ。

自分を賢くする情報だけに触れなさい

これは、私が編集を学ぶときに師事した人のコトバの中で最も印象的だったものだ。「一度編集の道を志すと決めたのなら、普通の人と同じ生き方ではダメだ。一日に接するあらゆる情報を、自分を賢くする情報だけに絞って貪欲に吸収しなさい。1分の空き時間があれば、雑誌の見開きをひとつチェックする。編集のプロになるとは、そうした生き方を選ぶということだ

ほとんどのメディアのヘッドラインやタイトルは「くだらない・・・」モノが多いのだが、それでも「通常はこのレベルである」というベンチマークにはなるから、自分がそこからどれくらいジャンプすれば価値を生めるのかがわかる。また切り口に見るものがなくても取り扱われているアイテムやスタッフ、イラストレーターなどはそれぞれ編集の「選別」が加えられているものなので、今のトレンド感を確認する上では有益な情報となる。

選別という観点でいえば、先日の「ソファの王様」でも述べた通りドキュメンタリー番組には膨大な「捨てる作業」が発生している。撮影した99%のVTRを捨てた上で編集された45分のドキュメンタリーの情報濃度は相当なものであり、ソファの上でビール飲みながら観るようなものではないのではと考えてしまう(まあ飲むけど)。同じ映像でも、YouTubeの意味のないイメージ画像と機械のナレーションで作られたまとめ動画などは情報濃度が低すぎてとても観られたものではない。

編集畑と広告畑

隣接するこの2つの畑には、実は全く人種の異なる住人たちが暮らしている。編集畑の人たちは「ホライゾナルな情報感性」を持った人が多く、あるテーマを出されたら瞬時に関連する隣接ジャンルやニュース・トレンド情報を引っ張り出してこれる。常に情報を脳にインデックスしており、反射神経的に処理するので手際はよいが、一方で思考が浅くなりがちなのが弱みでもある。

広告畑の人たち、ここでは主にコピーライターは逆に「バーティカルな情報感性」を持つ人が多い。物事を本質まで深堀りし、コンセプチュアルな昇華の先に一行のタグラインやキャッチコピーを導くという方法だ。このアプローチはうまくいけば抜群の切れ味を出せる一方、焦点を外すと大ハズレするケースも多い。

横串で物事を考えていくの編集人間に対して、縦串で思考を深めていく広告人間。これはどちらも長い年月をかけて養う思考の「型」なので、一朝一夕に切り替えられるものではない。だが、両方を同時に身に着けていくことは恐らくできるのだろうと思う。これからこの業界を目指す人には是非、欲張って両方の情報感性を同時に磨き上げていくことで1/100×1/100=1/10,000の存在となり、手にした高額なギャランティーをホイポイプロダクションズへ投資していただきたい。

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