マスプロをなめてはいけない。「この商品は宣伝費をかけてないから・・」のウソ

若かりし頃、飲み会で知り合った人の家に行ったら噂の「アムウェイ」なるものの実演がはじまったことがある。曰く「この洗剤は宣伝コストをかけていないからリーズナブルでも凄く汚れが落ちる」とのことで、塩1gほどを普通の洗剤とアムウェイの洗剤を溶いた水で流すのを見せてくれた。しかしそもそも、汗に多少の塩分はあるかもしれないが、洗剤で塩を落とすニーズは存在しない(塩は水に溶ける)。たしかに比較で見るとアムウェイ側の方が勢いよく塩が流れた気がしたが、それ洗剤というより水の量の加減ちゃうの?と思った。まあオトナだったので「ふーん」と聞いていたけども。
※オトナじゃなかった時の話はコチラ

マスプロをなめてはいけない

広告マンなので「宣伝費をかけていないからその分・・」的な言説には辟易する。基本的な経済の仕組みを理解していないから、こういういかにもなリクツに簡単に騙されてしまうのだ。確かに商品の価格には広告宣伝費が含まれている。ではそれをまるっと抜いたら、その分価格が下がりますか?・・・なわけないです。以下順を追って仕組みを見ていきましょう。

①宣伝で数千万人への「認知」が確実に取れることが保証されているからこそ、小売りは発売前から「棚」を確保してくれます。

②売り場の「棚」が確保されているからこそ、メーカーは大量ロットの生産が可能になります(単価の大幅減)。

③さらにいえば、①②が可能だからこそ、新商品の研究開発に何億円もの投資をすることができます。

薬局やスーパーに行ったら数百円であらゆる機能がついた洗剤が手に入るのは、このマスプロダクションの仕組みが何十年も回ってきた末に生まれた賜物なのです。アムウェイの商品だって、この研究開発の上にのっかっているだけに過ぎない(メーカーから型落ちの知見を人材ごと引き抜いてね)。しかも、値段が安いのは(そんなに安くなかった気がするが)宣伝費をかけないからではなく、宣伝と営業活動を「タダ」でやってくれる信者がいるからです。つまり売っているあなたは人件費をガシガシと無料で差し出しているわけだ。そりゃあ安いわ。

まっとうな仕事は全て尊い

仕事柄、何百人という企業のブランド担当者や商品開発担当者にお話を聞いてきましたが、担当ブランドの魅力を熱く語る姿は全て胸をうつ感動的なものでした。コマーシャルやめて、そのまんま聞かせたら全部ファンになってくれるんちゃうの?って思うくらい。シャンプーひとつ作るにも、スピーカーひとつ作るにも、その裏にはとんでもない思い入れと熱量が詰まっている。そんなアイテムが並ぶ売り場はめちゃくちゃホットなスポットなのだ。
世の中の真実とは、こういうまっとうな営みの中にあるのであって「実は商品原価は10%であとは宣伝費・・!」みたいな一見世の中の秘密を暴いたかのような言説は誰かの利権のためにでっち上げられた単なる「セールストーク」であって、真実からほど遠いもの。今日から、300円のシャンプーの裏にかけられた、研究開発やマーケティングの情熱を想像しながらゴシゴシ頭を洗ってみてください。いつも以上にサッパリして、ついでに足も洗えるはずです
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