中抜きするのも大変なのだ。食えない広告代理店マンの食えない現実

オリンピック(ピッグだっけ?)関連のゴタゴタで広告代理店の中抜きバッシングが盛んです。ターゲットになっている一位の企業のことはよく知りませんが、私も代理店の中にいた人間なので、中抜き・・もといマージン商売の大変さは身をもって知っています。そんな簡単な商売じゃありません。なぜ大変か、その一番の理由は間違いなくこれ↓

10万円稼ぐのに、100万円分の責任を負わされる。

たとえば雑誌に1Pの広告を掲載するとします。費用が100万円だとすると大体内訳は制作費に30万円、掲載費に70万円くらいで、この後者の掲載費に対して15%のマージンが発生します(だから利益は10.5万円)。では前者の制作費でぼったくりしてんだろう!とお思いでしょうが、制作費は原価トントンか少し赤字がほとんど。安いプロダクションは安いなりの理由があるので、ある程度腕のいいところに頼まないと、入稿できず手元の仕事が一気に溢れて溺れ死にます。

また、マージンも15%まるまる支払ってくれるのはナショクラと呼ばれる大手だけで、あとは大体10%程度まで値引きさせられます。つまり、100万円の責任を負って得られる利益がよくて15万円(制作で5万程度利益出せた場合)、通常は5-10万円です。5-10万稼ぐのに、100万円分怒られる。それを10-20案件同時に進行していく。常にそのうちの数件から燻った香りが漂っている。これが真っ当な代理店マンがいつも追い詰められた顔をしている理由です。

さらに追い打ちをかける「刷り直し」という悪夢

100万円分の責任を負う、ということの背後にはもうひとつ真におそろしい(いや、おぞましいと言っていいだろう)事実があります。仮にこの広告原稿に対して1文字の誤植があったとします。すると(クライアントの担当者もチェックして校了を出したにも関わらず)「なにやってくれてんねん!」という話になり、100万円全額補償せねばなりません。たまに「プロモーションタイミングを逸した」とか言ってさらに倍率ドン!200万円補償とかもあります。これ、取り返すのに以降ノーミスで10-20回仕事しないといけません。

私はパズーと同じく田舎育ちで目はいいので、幸運にも刷り直しは食らったことはありませんが、それでも何度かそれまでの人生でかいたことのないタイプの汗をかいたことがあります。こんな経験があるので、違和感のある文字は浮き出て見える特殊能力が身に着いたせいか、メールのやりとりやSNSのつぶやき含めて(泥酔時はしらん)誤植は一切しなくなりました。それくらいプレッシャーなんです。

まあ一番のとこは知りませんが、これが「中抜き」の実態です。中抜くどころか骨抜きにされて寿命が短いのは定説です。言葉に踊らされて、この前々段落の最終行のような状態の代理店マンをさらに追い詰めるようなことだけはないよう、くれぐれも願います。

関連記事

マーケ現場の「なんか違う」は、一歩目の踏み出しの弱さ=言語的整理の不足が原因。まずはコトバで太い骨格を通した上で(STEP①)、デザインによってそれを肉付けする(STEP②)のが基本だが「それっぽいが何も言ってない未完成なコトバ」をベースに[…]

newnormal_image_pexels-dids-3635539
公式Twitterをフォローして、最新情報をチェック!