ヒトの遺伝子は、紀元の境目であるキリストの頃はもちろん、洞窟に壁画を描いていた時代からほとんど進化していない。文明のゆりかごによって脳の容積が小さくなるなど、見方によってはむしろ退化すらしているという。ただでさえ形質を一世代継承するのに20-30年もかかるというのに、このままでいいのだろうか。
ヒトは毎日、「内面的」に進化できる唯一の生物である。
100年単位のサイクルで見ればヒトはこの世に生を授かり、しばらく生き、そして土に還っていく存在である。そして1日単位でも、そのサイクルを相似形的に繰り返している。一日の仕事を終えたらぐったり床に入り、そののち意識を失い、翌朝また生まれ直すように元気に起きる。潜在意識の働きで、睡眠中に前日の経験や記憶内容は整理結合されている。漠然と生きていても、内面的な進化は日々繰り返されている。
この1日の生まれ直しのサイクルをもっと意識的に活用できれば、ただただ「死に近づいていくだけの時間」は、一日一日を積み重ねていける「実りある時間」に変わる。何かの感性を養いたければ、一日決まった分量のその分野の作品などをインプットした上で睡眠に入る。自分のネガティブな性格を改善したければ、ポジティブになれた一日のシーンを復習しながら睡眠に入る。そのようにして、潜在意識にお任せする業務を日々具体的にしていけば、一年365日が格段に実り豊かなものになる。
毎日、自分をRe-Creationしよう。
昨日よりも今日、今日よりも明日がよいものになると信じられる時、ヒトは幸福を感じる。経済的な面や子育てなどの社会的営みにおいてもそれは享受可能だが、不景気や不良化など常に期待外れはつきものだ。その度ごとに絶望したりしないように、最初の幸福の積み重ねの軸足は自分自身の内面的成長に置くべきだ。
遺伝情報には、肉体の形質的な情報を伝達するDNAもあれば、いわゆるミームと呼ばれる情報遺伝子もある。そして自分自身を後世に残していく、という意味においてはどちらも有効であるし、人生の喜びをもたらしてくれる。たとえ子どもがいなくても、内面的に成長した自分が獲得した知恵やコツを世に残していくことはできるし、それによって自分はもちろん他者もハッピーになれる。そもそも人は、なりたい自分になるために生まれてきたのだ。レクリエーション気分で、毎日自らのRe-Creationを楽しもう。