50年の欺瞞を暴く。株式投資の不滅の定理「長期分散投資」のウソ。

私は疑り深い性格なので、資産運用の本を1冊読んだら、それが正しいか確認するために19冊の本を読んだ。結論書いてあることは1つだ。「プロの機関投資家もインデックス(平均)に勝てないのだから、個別株もアクティブファンドもNG、手数料の安い外国株インデックスファンドをひたすら長期保有せよ」だ。しかしやはりこれはどうも疑わしい。100人に100人通用する方法論はたしかにそれだが、それを勧めている本人たちは絶対ほったらかし投資はしていない感がハンパないのだ。どうにも疑り深いもので。

業界の「定石」を疑え。

誰もが口をそろえて同じことを言っている場合、その発言の裏には「大きな意志」が働いていると考えて疑ったほうがいい。たとえば数年前からニュースで取り上げられる高齢者の自動車運転事故だが、直近15年の絶対数を見ると高齢者(65歳以上)の人数は増加しているにも関わらず、事故の絶対数は減少している。にも関わらず急速に浮上した社会問題のような扱いになっている背景は、そのニュースをスポンサードしている企業の面子をみればわかる。人間の事故リスクを浮き上がらせることで、天秤にかけられる側のAIによる自動運転リスクを社会に許容させるための「大きな意志」というわけだ。

保険業界の欺瞞についても以前に「終身保険という名の終身刑」で触れたが、様々な「業界」が口をそろえて言う一見「正しい」考え方は、あなたのためではなくその「業界」の利益に供するために生み出されたものだ。冒頭の証券業界が口をそろえて提唱する「長期分散投資=インデックス」も同じだ。たしかに低リスクで年利5%ほど資産は増えていくので、銀行預金よりは遥かに良い。しかし冷静に考えてみてほしい。インデックス投資とは「どう考えてもダメな株にも、絶対に伸びる株にも機械的に同じように投資する」ということだ。普通に考えて「どう考えてもダメな株」をやめてその分「絶対に伸びる株」に100%投資したほうがいいに決まっているではないか(もちろんその中で複数銘柄に分散するのはマストだ)。

最強のロジックのトリックを暴く。

そこで出てくるのがウォール街が50年前に考え出した有名なロジックだ。「どの株が伸びるのかはプロにもわからない。その証拠に、歴史的にみてプロの機関投資家の運用成績は、インデックス投資(=相場の平均)を超えられず、むしろ手数料の分だけ不利である」という、一見非の打ち所のない定石であり殺し文句である。しかしここにトリックが一つ隠されている。それは「長期運用」を前提としているということだ。5年や10年の長期運用において、市場の未来を正しく予測することはそりゃあプロでも無理だ。調査をするまでもないことだ。しかし、「ここから数カ月先」に限りなく伸びる可能性の高い株ならわかるのだ。

さて、じゃあ何故一般大衆の預金をインデックス投資に誘導するのか。それは、預金から株式市場全体に資金が流れることで、全体的な株価が上がるからだ。実体経済が劣化していても、株式投資を始める人が増えれば株式市場は伸びる。自分たちが絶対に買わないような「絶対に伸びない株」にも平等に資金が流れることで、倒産による恐慌リスクも減少する。そうして土壌を肥やしたうえで、自分たちが最も良い果実をいただこうということだ。

ただ、くれぐれも誤解してほしくないのが、少しずつでもコツコツ資産が伸びればいいのだ、という人が長期のインデックス投資をやることは間違いではないということだ。ただ、ここ30年伸びていない日本国内のインデックスに半分かけたりすることが推奨されるのは「リスク分散」を建て前としたウソだ。配当金のないインデックスは、指数が上がらなければいくら持っていても全く意味はない。これも消費者に5%程度の運用益で満足させておいて、残りの資産を日本株の養分にするという業界の作戦だ。インデックス投資が既に超絶にリスク分散されたものなのだから、過去毎年平均10%程度伸びてきたS&P500一択(あるいは新興国株式とのMIX)でいい。

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長期分散投資の嘘
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