さて、まえがきのあとがきで書いたように、キックオフコンテンツのひとつとして私の中にある「こんな物産館があったらいいな」を構想していきたい。以前紹介した中長期ビジョン図の通り、現在の「広告 × 編集」というスキルセットを軸足としつつ、徐々に地方における実事業のプロデュースへと自らの業務領域を展開していきたいという構想の中では長期プラン実現に向けてのアタマの準備体操であり、「先に納品してしまうプレゼン」の実践といったところだ。
地方の物産館に関しては、以前の記事で指摘した個人的に感じている以下の問題意識を出発点として、身近な淡路島というフィールドにおける物産館というものを考えてみたい。
様々な物産館や道の駅を回るが、特産品を練り込んだ煎餅や饅頭、ジャムなど加工品ばかりで正直買うものがない。もっと地域の活きた特産品とのエンカウンタリングな体験をダイナミックに楽しめる新しいカタチの物産館はないものか
淡路島を島ごとサブスク化する
まず考えたのは、淡路島を島ごとサブスクリプション化し、物産館を季節ごとに変わる中身の品定めをするための場とするということだ。収益の積み上げにはリピート化の設計が鍵となるが、サブスクによる定期便で継続的な関係性のきっかけを作るとともに中身を自ら選定できるようにすることで来訪の「口実」をつくる。
人気を集めるミールキット「KitOisix」のコア・ベネフィットも「献立の悩みから解放される」であるが、この場合も「とりあえず淡路島へ」という口実を作ることで週末の予定を考える手間から解放するという狙いもある。人々は、日常のめんどくささを払拭してくれる便利な口実に飢えているのだ。
「買い付け」というレジャー体験。
また、リピート化にはドーパミン設計も必要になる。単なる買い物を「買い物体験」に変えることで、これまでとは別種の興奮を脳が喜び、繰り返しその刺激を欲するようになる。そのための鍵は「買い物ではなく、買い付け」だ。既に予算は計上してあるので、その中身をバイヤーとして選定しにいくのだ。
たとえば親子で行く場合、バイヤー同士として新たな会話が生まれるのは新鮮な体験になるだろう。また、その季節ごとの淡路島の「旬」にまとめて出会うという濃密な体験は、学校で行われる社会科見学以上の学びがある。またバイヤーとしての味見は当然無料だ。「行かなければ損」というモチベーションをくすぐれば、妻の説得コストは限りなくゼロに近くなる。