足かけ4年にわたって続いたコロナ禍。世界規模での外出制限など前代未聞の事態を受け、私たちの行動習慣も常識も大きく変わった。
下図はとあるサービスの、コロナ前後の市場規模を比較したものだ。私たちの暮らしに深く根付いたものだが、何のジャンルか分かるだろうか?

出典:コネクテッドTV及び動画配信サービス等に関する実態調査報告書(公正取引委員会, 2024.3)
答えはNetflixやAmazon Prime Videoに代表される「動画配信市場」である。読者の中にもこの期間に有料契約をはじめたという人は多いだろう。
コロナが明けてまもなく押し寄せたインフレの大波の影響もあり、生活者の巣ごもりは習性化した。外出しなくても、定額で無限にコンテンツを消費できる。しかも、そのコンテンツは日増しに増えていく。
私たちは、以前にも増してドラマや映画、アニメなどの「物語」に触れるようになっている。
一方で、気になるデータも。
動画視聴が大きく伸びた反面、日本人の読書量は大きく減少している。
「月に一冊も本を読まない人」の割合は2000年代後半~2010年代まで47%前後で推移していたが、2024年の調査では一気に62.6%にまで増加。

出典:令和5年度「国語に関する世論調査」の結果の概要(文化庁)
日常の実感としても、アニメやドラマが共通の話題に挙がることは多くなった感がある。一方で電車など街中でも紙の本を読んでいる姿を見かけることはめっきり少なくなった。時代の流れといえばそれまでだが、読書量の大幅な減少は気になるところではある。
”課題先進国”日本は、大丈夫なのか!?
今後、世界のどの国も直面していない問題を打開していかねばならない日本だが、少し不安な気もしてくる。情報インプットの内容が変われば、当然アウトプットの質も変わってくる。そこで、私たち日本人がこれから日々の成果=アウトプットをぶつけて「打開すべき社会的課題」は何か?改めて確認してみよう。

出典:日本の幸福度は22カ国で最下位、若者は世界で低く 米大学など調査(日本経済新聞)
名目GDPは世界で4位、女性の平均寿命は40年連続1位、治安も悪くない。そんな国の状態と大きく矛盾するのが「幸福度」だ。ハーバード大学の2025年調査では日本は22カ国中最下位。特に20代~40代の幸福度が低いことがわかった。
「幸せ不足」の原因を深堀りしてみると・・
日本人の幸福度の推移を見ると、91年のバブル崩壊を境に価値観が大きく変化し、同時に幸福度も大きく低下している。2000年代以降は戦後復興期並に逆戻りしている。20代~40代が幸福を感じられない要因は、バックグラウンドとしてこの価値観=人生において何を重視するかの変容もあると思われる。

出典:博報堂100年生活者研究所、”昭和100年間”の日本人の幸福度や価値観を評価した意識調査を実施(博報堂,2025.4)
日本人の幸福度の底が割れた90年代以降の顕著な変化としては、仕事に対する思い入れが半減し、それと入れ替わるように多様なスタイルの中で自分らしさを打ち立てることを重視する人が増えていること。ただ、その傾向が強まるにつれて、幸福度は低下している。
日本人の幸福感のボタンの掛けちがえには、この「素朴な個性信仰」も影響していそうだ。起きている時間の大半を注ぐ「仕事」での充足を捨て、わずかな「プライベート時間」での自己表現を志向する。時間比にすれば圧倒的に「捨てる時間」の割合が多くなる。仕事と少しの残業、通勤を入れた12時間 VS 就寝までの2-3時間。ワークライフバランスとは、限りなくムリゲーに近い理想論だ。
「幸せ不足」の処方箋
「個性」や「ワークライフバランス」という発想は、誰かを幸せにしたのだろうか。かといって幸福度の高かった70-80年代は「モーレツ」の時代。いまさらモーレツといわれてもワクワクする気はしない。これまでも現在も、私たちを幸せにする都合のいい価値観は残念ながら世の中には転がっていなさそうである。
そもそも「高度成長期の夢」や「個性信仰」「ワークライフバランス」など、社会から与えられたお仕着せの価値観でしかない。幸福度とは主観的なものなので、「自分」が主観的に幸福を感じられる価値観を選びとるべきで、なければ(たぶんない)自分自身で打ち立てればよい。
「自分の幸福論」の材料となるのが物語のインプット
お仕着せの価値観では日本人は永遠に幸せになれない。となれば、自分で打ち立てるしかないが、それこそ途方もない話のように思える。そもそも読書量も減っている中、自分のアタマの中からそんな創造的な発想が湧いてくるとは思えない。
ここで活きてくるのが、冒頭の「物語のインプット」だ。私たちは日々、大量の物語を浴びている。それらを単に「消費」するのではなく、明日からの自分の物語づくりの「材料」としてストックする。様々な主人公の意志や決断を参考に、自分の物語の「設定」を考えてみる。少なくとも、前向きで創造的な趣味にはなりそうだ。
自分が設定した価値観で世界を生きてみる。すると、気づけば新しい自分を主人公とした物語がはじまっているはずだ。挫折もあるしつらいこともあるだろう。だがそれでも、幸せに近づける確率はきっと上がる。それを裏付けるのが2018年の神戸大学の2万人調査だ。

結論、幸福な人とは、学歴や収入が高い人ではなく、自分の意志で人生を生きる人であるということ。自分の物語を構築し、主人公として生きる人には無限に幸福感が供給されるように人間はできている。
そして、年収による満足度は1,100万円前後を区切りにアタマ打ちするが、内発的な意志を満たす人生は無限に満足感が増幅していく。
忘れてはいけないのが、オトナの人生の大半を占める「仕事」から目をそらさないこと。自分の物語も、ここを主軸にしたものでなければ「スピンオフ」的な人生になってしまう。
モーレツではなく、夢中に。お仕着せの個性ではなく「自分自身」として人生を歩みはじめる。すると、いつしか思い出すはず。
日々の仕事に忙殺されて、他人の価値観に振り回されて忘れていたが、「自分はもともと、自分の人生の主人公だった」ということに。