広告・マーケティングにおける「書く」仕事とは?誰に、何のために、どのように書かれるか

イラストやデザインの仕事と同じく、書く仕事もこの先どうなるのか不透明だ。だが一言で「書く」といっても領域は広く、残るものもあればAIに既に大方代替されている仕事もある。これからも、そして実はこれまでも実はずっとそうだが、書くとは書く前の「何を書くか」の概念(超)整理が仕事の9割だ。

何を書くか=What to Say?が大事とはよく言われるが、実は2層あって混在して使われている。マーケターのそれは「①訴求軸/訴求点」であり、コピーライターの場合は「②視点・切り口」を意味する。①を伝えるために、受け手のどの記憶や感情をとっかかりにするか?を全人生に潜ってつかみ取ってくる作業だ。

概念整理はあらかた終わって、あとは原稿用紙(古い)を埋めるだけの仕事は担当者がAIを使った方が合理的だ。書く仕事にこだわりたければ、少なくとも前段階の概念整理の部分から担えるようになる必要がある。外注であれば他社案件で学んだ幅広い知見をバックにつけて、精度の高い概念整理を提供すべき。

1文字0.5円のWebライティングでこの先食べていくことは難しいかもしれない。が、失われる仕事を嘆いてもしょうがないし、そもそも本当に「書く」仕事がしたかったのなら、Webライティングだけでは満足できなかったはず。求めていたのが「気軽に家で稼げる仕事」であれば、他に適切なものを改めて探せばよい。

誰に、何のために、どのように書かれるか?

認識の最適化➡行動を引き出すために書く

広告を含むすべてのマーケコンテンツは「認識の最適化」のために編まれる。不便を感じている生活者に対しては、それを埋め合わせる便益(ベネフィット)の存在を端的に知らせることで、購買という行動を引き出す。「知ってるけど私向きじゃない」という人には、別の側面を見せて捉えなおさせることで改めて手に取るきっかけを作る。時にはそれが、人生の必需品になることもあるかもしれない。

そもそも企業活動は社会生活を便利快適にするために行われる。だから、世の中をよくするアイデアが商品化されたら、それを適切なマーケティングメッセージとして伝達することで①認識が最適化される→②(購買)行動が最適化される→③人生が快適化する、という流れが生まれ徐々に生活水準が向上する。

また、広告費=コストと捉えられがちだが「これくらい広告で認知をとれば、これくらい売れるだろう」という読みが成立するからこそ大量生産が可能になる。小売りとの棚交渉では広告内容(どんなタレントを起用するか?)と媒体露出量が検討材料となる。その意味では広告は、市場における価格の最適化の機能も担っているということも忘れてはいけない。

コピーも編集も「書く」ことそのものが仕事ではない。もちろん最終的には書き上げる作業も必要になるが、本領はその手前の「概念づくり」にある。人生全般についての概念は、アリストテレスなど偉大な先哲があらかた概念整理をしてくれている。だが個別のブランドにそのまま落とすには抽象度が高すぎるため、その場面場面で適切な概念をオーダーメイドで纏わせる必要がある。

2つの書く対象: 手に取って吟味している人 vs 通りすがりの人

「書く」仕事の対象は主に2つ。既に商品を手に取って吟味している人と、通りすがりの人。比率は1:99。事業会社の人は前者の「買う気満々」の顧客に日々触れ続けているため、次第に残り99%の人の「キョーミない」という気持ちを忘れてしまう。そして多くの広告文言は、後者の人に前者のノリで書いてしまっている。

①1%=自社に振り向いた人に向けた書き方

事業会社のマーケターが「書く」領域は1%の「自社に振り向いた人」だ。少なくとも興味はあるから、その気持ちを確信に高めるために畳みかけていく。買い物で接客されている時も「買う気」の時に畳みかけられたら「もっとちょーだい」と思うが、ボーッと観てるだけの時に畳みかけられたら一目散に逃げる。

これは詰め将棋に似ている。かなり陣地の奥まで入ってきている状況で、確実に「詰み」に至らしめるべくタイトに打ち手を積み重ねる。的はずれな打ち手が混ざれば即座に逃げられる。このノリで序盤から「王手、王手」を連発しても勝てないし、手駒がなくなってしまうが、同じことを書く時にはやりがちだ。

②99%=通りすがりの人に向けた書き方

広告会社の書き手が求められるのは99%の「通りすがりの人」に向けて投げかける言葉。そもそも事業会社が扱う1%の「振り向いてる人」とは全く違うコミュニケーションだということを、まずハッキリと認識する必要がある。通りすがりの人には強力な「慣性の法則」が働くので、基本的に足は止まらない。

おまけに時代は情報洪水社会だ。30年前から社会に溢れる情報はとうに人間の処理能力を超え、99.9%の情報は無視される。というか正気を保つためには無視せざるを得ないのだ。残りの0.1%に入るための「ラクダが針の穴を通る」ような作業をするのが、広く告げる広告のコピーライティングの「書く」仕事だ。

実際のマーケの現場では、この両者の差が明確に意識分けされていないケースが多いように思う。コピーライターも1%領域(顕在層)を書くときはコピー発想を脇に置かないといけないし、事業会社のマーケターも「広く告げる」時の潜在層向けの言葉づかいは全く別領域なのだから専門家に任せないといけない。

 

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