生活者の「なんとなくモヤモヤ」を拭き取る言葉。広告コピーのラベリング効果

コピーライターの重要な仕事のひとつが「ネーミング」だが、これは商品・サービスの名づけだけではない。それらの仕事の何倍もやっているのが裏ネーミング=なんとなくモヤモヤした感情に名前をつけること。そしてスッキリした喜びの瞬間にすかさずブランドを紐づけることで快く記憶してもらう。

fMRI研究によればネガティブな画像を見たとき、その感情を言葉でラベルづけすると、単に画像を見る場合より不快な情動を司る扁桃体などの反応が低下し、情動のコントロールを担う右腹外側前頭前野の活動が高まることがわかっている。つまり言葉が感情を感じる➡認識できる対象に変換するのだ。

生活者のモヤモヤに名前を付けることは、内面的な言語的整理なので「スッキリ」する。感情的なカタルシスを与えると同時に、そのモヤモヤが自社商品・サービスによって「解決可能なものである」という理解が得られ、人生のオプションや手札のひとつとして受け入れてもらえる。

生活者の「なんとなくモヤモヤ」を拭き取る言葉。

商品・ブランドまわりの生活者のフラストレーションを的確に把握し、それをパッと言い当てると手を触れずに生活者の「なんとなくモヤモヤ」を拭き取ることができる。この精度を上げるには、日々の人間観察やソーシャルリスニングの積み重ねが欠かせない。

広告メッセージでは、もともと生活者自身の中にない感情を新たに植え付けることは不可能。しかし生活者の中に既にあるモヤモヤをうまくラベリングして、自社のブランドベネフィットと紐づけることは可能。振り向いてもらえるのはもちろん、「自分のことをよくわかってくれてるブランド」になれる。

いいコピーとは「生活者の中にすでにあったのに名前の付いてなかった感情に名前をつけること」ともいえ、感情の辞書を豊かにしてくれるものである。この役割を果たすとき、コピーは単なる商品の説明をする言葉ではなく、生活者が自分自身を理解するための言葉に格上がりしている。

事例①:空腹による人格変化に名前をつけたSnickers

Snickersは「お腹が空いたらSnickers」ではなく、「空腹による人格変化」という現象に着目。Cranky(気難しい)→原因は空腹→Sniciers。Irritable(イライラ)→原因は空腹→Sniciers。といったように、空腹が引き起こす感情に名前をつけることで様々なモヤモヤとSnickersを紐づけした。

Snickersのラベリングキャンペーンのメインコピーは「You’re Not You When You’re Hungry」つまり「お腹が空いている時のあなたは、あなたではない」=思わぬネガな態度をとってしまうリスクを提示する強い気づきを与えることで、1年間で売上+15.9%、展開した58市場のうち56市場でシェアを獲得。

2015年の「Hunger Bars」では、実際にブランドロゴを外して、空腹が引き起こす21種類の「症状」をパッケージに印刷。空腹による症状自体をプロダクトとして見せることでより直接的に「解決すべき=解決できる症状」として提示することでメッセージの浸透を図った。

事例②:自分の中の批判者の存在に気付かせるDoveの「Inner Critic」

DoveのReal Beauty Sketchesキャンペーンは「女性は自分の容姿に自信がない」という一般論で終わらせず、「自分自身の中にいる批判者=inner critic」という形で問題を言語化。これは同社の調査に基づいており、回答者した女性の半数以上が「自分自身が最も厳しいbeauty critic」だと回答したという。

DoveのReal Beauty Sketchesキャンペーンでは「私は美しくない」という感情を「自分は自分を実際以上に厳しく見ている」という解釈へと変換。感情→ラベル→リフレーミングの3層構造でモヤモヤの解消を図った。キャンペーンは100万ドル未満の支出で大きなROIを生んだとしてGrand Effieを受賞。

 

 

 

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