兵庫県に生まれ育った僕だが、淡路島が古事記の冒頭を飾る国生み伝説の舞台である、ということを知ったのは移住してからのことだ。神話の神々と弥生~古墳時代の王や女王、そして現在の天皇とが脈々とひとつづきになっている国は、おそらく日本くらいのものだろう。非常によくできた物語設定をベースとして、まさに口伝の物語(ナラティブ)によって統治されてきた国なのである。
そんな物語のカリスマ中のカリスマ(神にカリスマという言葉はどうかと思うが)が、アマテラスとその両親イザナギ・イザナミだ。その両親を祀った日本の神社の元締め的神社があるというので、お参りにいくことにした。いやいや、こないだ行った出雲大社とか、神様サミットが開かれる伊勢神宮、天孫降臨の伝説がある高千穂エリアなんかに比べると大したことなかろう、と多少カジュアルな気分で行ったところ、いきなり神の鉄槌をくらうことになったのである。
もうひれ伏すしかない。伊弉諾(いざなぎ)神宮の絶対的センター感。
もう何も言うまい。なんと美しい構成なのだろう。一枚画を描くとはまさにこういうことだ。ポジショニングとはこういうことだ。アマテラスは天岩戸に隠れたという伝説から太陽神であることは何となく分かるが、国全体がその神の運行に基づいて綿密に設計されていたなんて。
これを見ればたしかに日本は「神の国」であり「美しい国」といいたくなる気持ちもわかる(TPOはわきまえよう)。そしてこの伊弉諾神宮こそ、絶対的センター。サイリウムを家に置いてきたことが悔やまれる。完全に不意打ちを食らって、フラフラと進んでいくと厳かな石板が。しかし達筆すぎて全く読めない。
・・・と思ったらあれ、読めるぞ。
「勇者よ」と書いてある。いやいや、俺はただの酔っぱらいやし。そのつづきを読んでみると、
「いや、お前は伝説の勇者なのだ!」なかなかインタラクティブな石板である。そういえば心当たりがないわけではない。若かりし頃は竜王を倒してローラ姫を救出したし、バラモスもゾーマもデスピサロも倒した有名な勇者だった。そのあとビアンカとも結婚したから、既婚者でもある。
そうだった。大学受験とか就職活動とか合コンとかですっかり忘れていたが、私は勇者だった!
勇者である私が(急に一人称が変わったのは、自覚のあらわれだと前向きに捉えていただきたい)かしこくもつづきを読解したところによれば『これは、淡路島の海人(アマ)の国王からの勅命である。洲本城の裏に二百尺の竜が現れ、その子天(アメ)の神が治める大和(ヤマト)の国との海路を断絶している。淡路島に散在する7つの材料を集め、勇者のつるぎを鍛造し、竜を討て』とある。
7つの材料とは以下である。
①さざれいしの巌のこけ
②おのころの塩
③MK鋼
④竜のうろこ
⑤せきれいの石
⑥クレベリンの化石
⑦うずしおの目
さてさて、いきなり「ぼうけんのしょ」が始まってしまった。さて、どうしよう。